ヒューマニエンス「”塩”進化を導いた魔術師」を視て

 動物群の存在を支える三大中核物質の一角、”塩”の登場であります。この役割と意味は、多くミクロ作用で発揮されていますが、絶対必要性は日々の生活のあらゆる側面で表出しています。それを、今更ながら取り出して見ると、調味/加工/殺菌等、趣向から機能にまで至る、本当に欠かせない物質となっています。今回、この塩という物質の探求を考えると、少なくとも夏の熱中症対策を越えて、『生命と塩』なる総合把握が求められるテーマであり、動物をヒトを説明しようとする淵に立つことに誘うのです。個人的には、古来よりの水・海との関係の深さを確認する大事な足跡であると、感じています。以下、番組キーワードに沿って、自由に書こうと思います。

α 0.9%

 この数字は、硬骨を持つ脊椎動物の体液におけるナトリウム濃度であります。不思議なのは、魚類も哺乳類も同様にこのレベルで維持されていることなのです。この両者、塩に対する対応は逆であり、排出したい魚類⇔保持したい哺乳類、ほどの差がありながらも、基準となるのはあくまでも0.9という濃度になっているようです。何故そうなのか?しかもその調節は、自律的であり、単純なる濃度勾配をトリガーにした水の出納で為されています。この視点で云えば、動物存在の物理性(フィジカル?!)の一面を診ることであります。機能例としては、赤血球の酸素運搬での運動性/細胞全般での栄養素吸収(シンポーター)が挙げられていましたが、総じた働きは、栄養素”塩:ナトリウム”というよりは、媒介物質という属性が最も適切な代名詞だと言えるでしょう。

β 4億年前の上陸劇

 水・海からの卒業という上陸劇は、生物にあらゆる変化/適応/進化を課した凄まじい環境圧として作用し、脊椎動物の輪郭を形成しています。その意味では、この劇の台本を覗くことはそのまま、陸生することの実態、ひいてはヒトを識ることに直結します。卒業とは云ったものの、永遠の別れではなく、代替環境・機能を獲得したことを以て、海水依存から脱したのです。言い換えれば、そうは言っても欠かせない海を陸上に持ち出すことに成功した…のが実態となっています。海との関係性を生々しく残す場は、母体の子宮を置いて他にはありません。上陸は身体のあらゆる機能や形態に反映していますが、塩分の維持確保に関しては、『腎』がそのターミナルであり、尿細管でのナトリウム再吸収こそ我々が獲得した真骨頂であります。上記しましたが、魚類とは全く逆の機能なのです。

●軟骨魚類サメの体液ナトリウム濃度が、2.0%であること、正に好奇心を揺さぶります!

γ 脳と社会

 この視点まで登って来ますと、拡大と複雑化に苛まれてしまいますが、せめて言えることを箇条書きで提示しておきます。

 ★脳の電気作用

 神経作用は、電解質であるナトリウムイオンによるインパルス伝導と、その集積が創ることを考えると、脳機能はナトリウムに依存すると言えなくはないですが、ヒトの意識・無意識現象をナトリウムに還元出来るかと問われれば、疑問しか残らないのです。事実としては、ヒトは食(塩含む)を摂らねば、1ヶ月で死ぬということです

 ★家畜化と塩

 ヒトが動物と共存して来たことは、生き残るための大いなる条件であったことに疑いはありません。番組内では、その共存(躾?)を為した材料としての”塩”が話され、食餌の中でも特に確保が難しいことが、ヒトに寄ることになった可能性が示されていました。しかしここで想うことは、動物調教における”甘味”の力です。甘辛論をする気ではありませんが、胎生・哺乳類の子宮環境で刷り込まれる甘さは、糖を代表として動物にとっての唯一エネルギー源であり、行動の誘因にもなっています。

 ★人類のグレートジャーニー

 人類のアフリカからの移動と拡大を成した要因としての、塩探索の旅路 が提案されました。これに納得しないこともないのですが、もしそうならば、内陸への移動というリスクよりは、皆がビーチコーミングと漁を主とした海洋民族化してゆくことのほうが、自然ではないかと感じられています実態はおそらく、海際から離れられない期間もあったものの、何かの解決策を得たことを以て、内陸へ進んでいったのではないか、と推察しています。その関係の深さは、貝塚遺跡や貨幣としての貝殻等に残されているのです

●蛇足ですが、サラリーマンとは、語源で申せば、『塩取り人』のことです(^-^)

δ 舌

 生態を如実に現す、『舌』であります。ここでの合点は、五味(甘味/酸味/苦味/旨味/塩味)の中の塩味を感じ取る味蕾に、ナトリウムに選択的な反応を示す細胞があることに集約されます。それは、甘味旨味と共鳴する機能も合わせ持ちながらも、生物的意味を教えており、過剰には毒々しい辛さを、適量には美味さを、と入口からその属性の両面を感じさせています。重要性は拓かれつつも、人工塩味料すら途上であることは、我々を謙虚にしてくれるようです。

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