フランケンシュタインの誘惑 「人体蘇生」 に想う

 同じく、NHK科学番組を取り上げます。2016年~2018年までの間に放送されたもので、今も再放送しています。以下に、NHKが出している副題をそのまま載せます。

輝かしい科学の歴史の陰には、残酷な実験や非人道的な研究、不正が数多くあった。 そんな闇に埋もれた事件に光を当て、「科学」「歴史」「倫理」に迫るシリーズ。

 この番組で取り上げるテーマは、興味を惹かれるものが多く、都度に視聴しています。中でも今回は、その最終回となった「人体蘇生に挑んだ現代のフランケンシュタインに関する想いを書きます。内容の踏襲になりますが、気をそこへ飛ばして欲しいと思います。時代は、20世紀前半(1930年代)でありました。世界恐慌の最中、米国ではフランクリン・ルーズベルト大統領の治世、ソ連ではスターリンの独裁、ドイツではヒトラーの台頭、日本では満州国建国、といった事々が同時に進行しており、その決着には再度の世界大戦が必要であった、という認識こそは、今の視点なのかもしれません。

 しかし何にしても、米国国力の充実が規格外であったことは事実ですし、その地で行われようとした実験であったのです。そんな世相の中、1903年米国 に天才ロバート・コーニッシュが誕生します。彼は、14歳でカリフォルニア大学に入学し、20歳で既に博士号を取得しています。正に「神童」と言われる才能ぶりではありましたが、その能力が「人体蘇生」という問題多き領域に傾注されたことが発端でした。蘇生に際し、コーニッシュは、生体の血液凝固防止/呼吸の復活・賦活、の2点に注視しました。そして、その知見を「犬体蘇生」に適用し成功させたことを切欠として、次いでの「人体」へ進もうとします。対象は、ガス吸引で死んだ死刑囚が当てられようとしましたが、当時ですらの”生死倫理”と”法解釈”の壁に阻まれ、実現不可能に終わると同時に、世間からは「マッドサイエンティスト」のレッテルを貼られることになりました。学術界から放逐されたとも言えるでしょう。この事から以降、彼は世間と没交渉となり、1963年59歳という年齢で脳梗塞により亡くなっています。

 ここで言いたいことは、マッドサイエンティストと評された事実と、現代の再生救急医療で欠かせない「ヘパリン」と「心肺蘇生法」という事実、の突合せなのです。少なくとも、現代人の生活にコーニッシュの見出した知見が十全に活かされていることを見るにつけ、革新的発見は、究極・特殊・変異 といった環境でしか見出し得ないということなのでありましょう。学術界では、評価されなかったのは「論文を残さなかったからだ」の一点張りですが、果たしてマッドサイエンティストの知見を後世で取り上げたかどうかは、誠に疑わしいと感じています。再生医療の視点で見れば、現代は「遺伝子」「ES細胞」「IPS細胞」「臓器移植」と、ステージが上がっていますが、その問題は同根であり続けると思います。また、同じようなことは、番組内でも多く取り上げられましたが、個人的に印象に残るのが、◎ヒトラードイツのホロコースト ◎東独ドーピング問題 ◎日本陸軍731部隊石井史郎中将 等であります。そしてどれにつけても、当時の見識が今を創っているのです。

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