六芸総合コース

「人間とは、いかなる生き物か?」
このテーマに対し、より多くの視点を持ち、全体・関連・つながり・バランスを含めて理解していくことが、指導教養力をみがく近道です。
孔子の六芸思想(※1)を模倣するのは、そのためです。
総合コースで取り上げる9つの視点(9つのカリキュラム)は、テーマ(「人間とは、いかなる生き物か?」)に近付く為に選ばれた材料であると同時に、科学万能主義の中では見過ごされてしまうものであります。
新たな見方・知識・考え方を加えることによる、指導感性のルネサンス(※2)は、この学びの最大の目的です。

※1 六芸とは、中華思想の中核を成す「儒教」の始祖である孔子が提唱した、君子たるものに求められる広い学びを目的とした総合カリキュラムです。古代に於いては、礼 楽 射 御 書 数 といった多くの課題が据えられていました。

※2 ルネサンスとは、中世ヨーロッパ世界を覆ったキリスト教の価値観から脱し、地中海文明の原点である、古代ギリシャ精神の復活を目指した運動。適切な意訳は、再生・原点回帰。

9つのテーマ (六芸総合コース)

  1. ほねのちから Bone Pointing Method (BPM)
  2. スポーツトレーニング体操 Sports Training Gymnastics (STG)
  3. ことばのちから Powered Language Program (PLP)
  4. 古武道式足圧按摩術 (AMMA)
  5. 海女呼吸法 (AMA)
  6. 絶対動感 Absolute Time (AT)
  7. 内臓力(丹/胆)(TAN)
  8. 究極平衡 Equilibrium (EQ)
  9. フィンガーワールド Hand & Finger Training (HF)

授業構成

1コマ 120分
9コース×5コマ (90時間)
合計45コマ
予備枠3コマ (6時間)
総合計48コマ (96時間)

月4コマ
1日2コマ
10-12時・13-15時・30分質疑応答タイム
9:30会場 16:00退室

スケジュール

2023年以降の開催を予定しております。
会場・日時が確定次第順次、お知らせしていきます。

場所

船堀 タワーホール船堀(会議室)
https://www.towerhall.jp/4access/access.html

会場に変更が出た場合は即時お知らせします。

フォロー体制

  • 対面授業
    毎授業にテキスト配布(ファイルも配布します。)
    来れない人には郵送いたします。
  • 月1回Zoom授業フォローセション180分間(最大2回の予定)
    開催時間内に質疑応答いたします。
  • メールにて質問受付
    回答はZoom授業フォローセションの際に行います。
  • 授業ビデオを復習・欠席者用にYoutubeを利用し限定公開します。
    授業開催期間のみとなります。
    Gmailアドレスにてお申込みください。
    Gmailアカウントを利用して限定公開いたします。(Gmailアカウントがない場合は視聴不可となります。)

最小催行人数

3名

資格等

ベーシック修了書 授与
コーチングアーツ認定資格希望者にはテスト(筆記・実技・面談)を実施いたします。
(受験費用 18,000円税込)
合格者には写真入IDカードを付与
認定資格保有者はコーチングアーツWEBサイトでに掲載いたします。
認定資格保有者は年会費(10,000円税込)を支払うことにより資格継続となります。
認定資格保有者には年に一回、継続講習を受けていただきます。(受講費用は年会費に含まれます。)
(年会費不払い・更新辞退の資格IDはサイトに掲載となります。)

上記は予定となっており、変更することがあります。

価格

  • 一括支払い 110万円(税込み)
    支払期限
    第1回開催、2週間前までにお振込みください。
  • 分割支払い 120万円(税込み) 60万円+30万円×2
    支払期限
    1回目:「60万円」第1回開催、2週間前までにお振込みください。
    2回目:「30万円」第13回開催、2週間前までにお振込みください。
    3回目:「30万円」第19回開催、2週間前までにお振込みください。

お支払い方法

銀行振込

振込先
□ PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)
本店営業部 普通預金 3410198
有限会社カプティ
□ 三井住友銀行
浅草橋支店(614) 普通預金 7121082
有限会社カプティ


1.ほねのちから
-Bone Pointing Method-

脊椎動物にとって、骨の意味とは如何なるものでしょうか?
それは、海から陸へと環境適応が進むプロセスに沿って、保護・支持→推進・運動→呼吸・造血等、多くの機能が重ねられて来ています。
中でも、推進と運動を支える働きは、陸地で生活する脊椎動物の象徴と言えるでしょう。
ほねのちからは、ヒトの動きの可能性を、進化と骨格に学び、動作学習の基盤とする論理・実践体系です。

  • 1-1 ”ほねのちから” の場
    「ほねのちから」は、生物ヒエラルキー思想(※1)と、認知神経運動学(※2)の融合により構成されています。
    言い換えると、陸地で生活する脊椎動物の動きの可能性と、ヒトの運動学習力を、骨格を中心に考えるものです。
  • 1-2 骨学復活と体壁論
    粘菌・バクテリアはさておき、軸と極性(※3)の存在は、動植物の絶対基準です。
    その基準をヒトに求める時、体壁系(※4)の主役たる脊椎と内臓系が見出されます。
    ヒトの脊椎は、硬骨格と化し、保護/支持と同時に、空間認識と動作形態(※5)のメルクマール(※6)の役割を果たしています。
    またそれは、筋に起始と停止を提供し、食と性(※7)への働きの土台となっています。
    ここでは、体壁分化(※8)の様相と骨の機能理解を目的とします。
  • 1-3 メタモルフォーゼ#1(※9)
    脊椎動物の上陸劇から陸生化(陸地で生活する)、そして直立性獲得までの流れを理解します。
  • 1-4 メタモルフォーゼ#2
    個体発生(※10)と系統発生(※11)の視点を、ヒトの動きに照らし合わせ、その変化実態を学びます。
    また、ヒトに残る動物性を浮き彫ることにより、動物としての見方を養います。
  • 1-5 ソマティックランゲージと機能骨点
    骨の働きにおける支持と推進は、その機能が骨の形に見えています。
    特に主要な骨の末端部は鋭利化し、機能骨点(※12)として捉えることが出来ます。
    ここでは、全身の機能骨点を取り上げ、メルクマールとして運用する方法を学びます。
    骨点は、ソマティックランゲージ(※13)そのものな のです。

※1 生物ヒエラルキー思想とは、地球生物の進化相を4つに分割して、その、重層性から考える視点
※2 認知神経運動学とは、生物学/金子運動学/歴史臨床/認知神経学等の融合により構成された論理
※3 軸と極性とは、動植物の形における規則性や、成育の方向性のこと。
※4 体壁系とは、発生における脳・神経・筋・骨格等の総称。
※5 動作形態とは、特に動物のからだが創る、動きの形のこと。
※6 メルクマールとは、物事を判断する基準や指標のこと
※7 食と性とは、植物が繁茂し、動物が動こうとする最大の目的。※栄養と生殖
※8 体壁分化とは、生物の発生段階で動物性器官と植物性器官が分かれて発達すること。
※9 メタモルフォーゼとは、メタ(後に、超越した、高次の)× モルフォーゼ(形態、構造)に分割される用語で、合わせた意味は、変身・変態。
※10 個体発生とは、生物体が細胞分裂により機能分化してのち、一生体となる過程のこと。
※11 系統発生とは、ある生物種が、過去から現在までにたどった進化過程のこと。
※12 機能骨点とは、骨の動きの特性が現れた末端部位のこと。※コーチングアーツの造語
※13 ソマティック:somaギリシャ哲学における身体の意味/ソマティックランゲージ: 身体言語

2.スポーツトレーニング体操
-Sports Training Gymnastics-

古今東西の人類史の中でも、体操文化は普遍であり、養生・舞踏・武術に共通のルーツが見られます。
この文化は、動物ヒトが「どう動くか?・どう動けるか?」に応える分野として、変わらぬ価値を持っています。
コーチングアーツは、その価値を捉えるため、世界のあらゆる体操文化を研究しています。
このスポーツトレーニング体操は、その集大成であり、フィジカル独り歩き世相へ向けた身体教育の基礎体系です。

  • 1-1 体術・体操の世界史を見渡す
    ヒトが持つ身体観(※1)は、時代の創る思想性に大きな影響を受けています。
    そしてその身体観は、特有の慣習や教義となり、文化文明の源になっています。
    ここでは、それらに強く影響を受ける、体術・体操文化を、世界視点で見渡す眼を養います。
  • 1-2 動感図式と体操
    学びは、人間の象徴であり、あらゆる学びは身体から始まることが分かりつつあります。
    その現象には、動感図式(※2)や身体知(※3)という用語が充てられ、ヒトの認知現象(※4)を説明しようとしています。
    ここでは、運動学習の土台となる動感図式を身に付けるための体操の意味と効果性を、認知神経運動学(※5)の視点から解説します。
  • 1-3◎体能力と動物回帰
    ”ヒトのなかの動物・動物のなかのヒト”の言葉に表現されるように、ヒトの動きの可能性は動物の実態を識り、比較することにより、明らかになります。
    言い換えれば、動きに潜む系統発生(※6)を理解することに繋がります。
    具体的には、文化財としての華佗五禽戯を足掛かりに踏み込みます。
  • 1-4 スポーツトレーニング体操の5ポイント
    直立性ヒトの身体表現力の基礎を形成する5つのポイントを、詳しく解説します。
    この5ポイントの導入は、重力耐性(※7)空間認知(※8)全身動員(※9)基準値設定(※10) 等、あらゆる運動学習を下支えする働きをします。
  • 1-5 3極親和:円天自在(※11)
    身体の絶対零点(※12)を中心として生れる、左右/上下/前後(=3D)の3つの極は、ヒトに地球上での存在基準(※13)を与え、物事の認知性を支えています。
    故に、この3極のバランス発達は、身体表現力を安定・向上させる最重要点です。

※1 身体観とは、人間が自らの身体を精神や社会との連関の中で、どのように見ているのか、という思想。
※2 動感図式:金子運動学用語、ヒトの動きの感覚は、空間座標のような意味ある形を持つこと
※3 身体知:頭脳知に対極するもので、「からだが知っている」内容
※4 認知現象とは、ヒトの外部環境の知覚と、そこから起こる解釈の総体。
※5 認知神経運動学 :生物学/金子運動学/歴史臨床/認知神経学等の融合により構成された論理体系
※6 系統発生とは、ある生物種が、過去から現在までにたどった進化過程のこと。
※7 華佗五禽戯とは、中華三国志時代の名医華佗が提唱した導引術の名前。
※7 重力耐性とは、無自覚に掛かり続ける、生体への重力負荷とその変動への対応力。
※8 空間認知とは、地球上のヒト存在空間における自身の位置を知覚すること。
※9 全身動員とは、動作発現に際して、カラダのあらゆる部分使おうとする感性。
※10 基準値設定とは、ヒトの認知性を効果的に働かせるための身体基盤を整備すること。
※11 円天自在とは、3つの身体回転軸の自由な動員感性(武道由来用語)
※12 絶対零点とは、左右/上下/前後の全ての中心であり、身体重心でもあるところ。腸がその場に中る。
※13 存在基準とは、自己認識を持つための土台であり、この場合は、空間における自己定位の基準のこと。

3.ことばのちから
-Powered Language Program-

ヒトを深く識ろうとするための2大ポイントは「身体と言語」であり、近年「身体と言語」相互の強い連関性が見出されて来ています。
中でも、言語のコミュニケーション手段以外の新たな側面は、言語学や心理学単一の解釈を越え、脳・認知・運動・精神・無意識・音・気・量子物理といったテーマを巻き込み、身体と関わった広範な姿を見せています。
このことは、我々を言語の更なる重要性へと導いてくれます。
「ことばのちから」は、身体と言語の関係を元にした、人間の持つメタフィジカル能力(※1)を磨く論理と方法です。

  • 1-1 ニュートンからアインシュタインへ
    人類世界は、物質から知識、アナログからデジタルへの大いなる転換期を迎えています。
    それは、古典力学のニュートンと相対性理論のアインシュタインとの交代劇とも重なる様相です。
    また同様に、宇宙開発時代と歩調を合わせながら、空間の考え方も変わりつつあります。
    これらのことはそのまま、コーチングにおけるメタフィジカル世界の復権となり、現代のルネサンス(※2)を先駆けるでしょう。
  • 1-2 意識の法則
    ヒトの意識現象(※3)は、見えると見えないを媒介しつつ、言語とも深い関わりを持っています。
    また、あらゆる行為・行動・パフォーマンスの主役であります。
    ここでは、意識の働きの法則性を多角的に解説していきます。
  • 1-3 NLPと日本語
    米国発のNLP(※4)は、日本のコーチング業界に定着した感があります。
    しかし、ここで想うことは言語の違いによる文化差であり、直訳輸入では叶わない壁の存在です。
    過去からの歴史の中で、ベースボールを野球道と翻訳解釈したように、コーチングにおける日本語の意味と力は、とても無視出来るものではありません。
    そこで、一部NLPを解体しつつ、日本語独自に宿る感性と機能を解説していきます。
  • 1-4 フロイトと空海の再考
    西洋知(※5)の近代3哲に位置するフロイト(※6)の無意識世界と、日本の平安期に真言密教を中心とした東洋知(※7)を輸入した弘法大師空海(※8)の手になる、声字実相義「ショウジジッソウギ」(※9)の双方を取り上げ、ヒトの無自覚存在(※10)の一端を探ります。
  • 1-5 メタフィジカルトレーニングとしての『 ことばのちから:PLP』
    音と言語は、ヒトを動かす最大エネルギーです。
    それは、エネルギーの収縮と拡張、意識と無意識、拘束と自由の仲立ちをしながら、人間世界を創っています。
    ここでは、ヒトの持つ潜在感性(※11)を切り拓くに際しての、言語の有効性を実感するトレーニングを体験します。

※1 メタフィジカル:メタ(後に、超越した、高次の)×フィジカル(物質の、物理学的、身体的)の双方を合わせた用語。形而上、見えない世界の意。
※2 ルネサンス:見たい/知りたい/分かりたい、の標語に象徴される、欧州のキリスト教価値観に支配された中世からの脱出を果たした精神運動。
※3 意識現象とは、ヒトが覚醒し、物事が認識出来ている状態のこと。
※4 NLP(neuro liguistic programming 神経言語プログラミング ):米国において、ジョン・グリンダ―/リチャード・バンドら―によって創始された、能力開発、心理療法の名称。
※5 西洋知とは、ギリシャ哲学に始まる地中海世界を中心としたの知的体系。
※6 フロイトとは、実名ジークムント・フロイト、近代の3哲人に数えられる心理学者、主著は精神分析学。
※7 東洋知とは、儒教・道教・仏教の3つの教義の総称。
※8 空海: 俗名弘法大師空海、遣唐使として日本に真言密教を輸入した高僧。「般若心経」を重視した。
※9 声字実相義とは、晩年の空海が著した、音と声、言語の普遍性を説く文章。
※10 無自覚存在とは、ヒトの自覚性を支える無自覚性領域のこと。
※11 潜在感性とは、ヒト誰しもが無自覚に持つ、あらゆる可能性の総称。

4.古武道式足圧按摩術
-AMMA-

正式名称「按屯流按摩術」
”手当て”こそ、治療施術「あはき」(※1)の原点であり、漢方とともにオリエンタル医術の骨子になっています。
しかしそれらは、歴史上、外科の登場により疎外された感が強いですが、生物学の視点や実証される効能は、その意味と価値を色褪せさせることはありません。
日本医学史を見ても、多くが大陸から輸入されており、中華を始め印度(インド)からの足跡を如実に残しています。
その足跡は、文化の中で「養生」(※2)という言葉で呼ばれて来ています。
コーチングアーツが取り上 げている按摩術は、ルーツを印度ヨーガと中華導引(※3)に持ち、それを引き受けた日本の武世界が集大成させたものです。
特長は、”按屯”の表現が示すとおり、重さと動きにより生じるからだの歪みや縮みを補正し、円滑な呼吸循環を取り戻すことにあります。
また、通常手技で用いられる手指・肘とは違い、足圧を利用することにより、効果を大幅に向上させます。
正に、結果として生ずる体の脱力と循環による自然癒能の回復術なのです。

  • 1-1 中華導引と印度ヨーガ、日本のあはき
    中華導引/印度ヨーガ/日本あはきは、オリエント医術の系譜であり、道教・仏教・神仏習合(※4)といった 思想/宗教に付随した文化として、伝播継承されて来ています。
    ここでは、それぞれの特長と連関、歴史性を大きく捉える眼を学びます。
  • 1-2 日本武道と修行過程
    日本の「武」文化は、大陸との交流に大きく依存しています。
    関わる人物・事件を一部列挙すると、天智・天武天皇/北畠親房/役小角/野見宿禰/坂上田村麻呂/元寇/倭寇/空海/織田信長/尚氏/千葉周作/陳元贇/ 武田惣角/嘉納治五郎 等、はその主役陣になるでしょう。
    それらの歴史上の働きをかんがみつつ、当時からの武道修業の過程をあぶり出します。
    また、現代において、武道医学世界を表した三者(中山清※5/高橋華王※6/蓑内宗一※7)の例を挙げ、その背景を探ります。
  • 1-3 足圧按摩術の効果と論理
    印度と中華にルーツを持ち、日本の武人が引き受けた足圧按摩術と、その効能と論理を紹介します。
    足圧は、手指・手掌・肘頭の施術限界を越え、新しいセラピーの領域を切り拓きます。
    キーワードは、足圧鞣し(なめし)による、身体レジリエンス(※8)の賦活(※9)となります。
  • 1-4 実技の体験(伏臥位)
    按屯流按摩術の基本肢位である、伏臥位での全身施術を受けていただきます。
  • 1-5 実技の体験(仰臥位/側臥位)
    按屯流按摩術の基本肢位である、仰臥位/側臥位での全身施術を受けていただきます。

※1 あはきとは、 あ(按摩)は(鍼)き(灸)の頭文字
※2 養生とは、生活に留意して、健康増進を図ること。
※3 導引とは、 動物として適切に身体を動かし、呼吸循環機能を維持する行為の総体。
※4 神仏習合とは、神・仏の区別なく信仰すること。
※5 中山清とは、日本武道医学の創始者。大日本武徳会本部理事等を歴任。柔道範士九段。「武医同術」
※6 高橋華王とは、元国際武道学会会長。東京理科大学教授等を歴任。円明流14代宗家。
※7 蓑内宗一とは、東洋医学研究家。経絡経穴論と行動原理を「武医道」として提唱。
※8 レジリエンスとは、回復力 復元力 耐久力 再起力 ⇔ 脆弱性 
※9 賦活とは、活力を与えること。

5.海女呼吸法
-AMA-

ヒトと水との関わりの密接さは、母体の羊水環境に表れてます。
ヘッケル(※1)の 言う系統発生(※2)の姿は、海中生活の憶(名残り)そのままでありましょう。
生物の海からの上陸を、子の誕生初泣きとするとき、これこそが鰓( えら)呼吸から肺呼吸への一大転換史の再来と言えます。このような環境圧克服の姿を象徴する肺呼吸も、現代では、あたかも大量生産・大量消費経済の如く 、酸素摂取量と出力エネルギーのみに価値を据えられた身体観が支配しています。
しかし、呼吸現象こそ生命振幅(※3)の象徴であり、吸う適応(陽)の裏側には、吸わない適応(陰)の可能性が残されているのです。
事実、オリエント地域に於いては、吸わない適応(陰)に重きが置かれて来ています。
コーチングアーツの提案する海女呼吸法は、この吸わない呼吸(陰)を海女に学び、呼吸振幅(※4)の最大化を導くと同時に、水の力を利用する知恵の復活させます。

  • 1-1 生命現象と呼吸循環リズム
    自然界における自己増殖・エネルギー変換・内外隔離(※5)の3条件は、生物たる由縁であり、ヒトで言えば誕生から成長、そして老化から死に至るプロセスの全てを説明してくれます。
    中でも、エネルギー変換としての呼吸循環は、生き方の質に大きく影響 しています。
    ここでは、呼吸現象を「時間論」と交えて捉えます。
  • 1-2 近代呼吸生理学史
    近代のエネルギー代謝理論は、英国産業革命とフランス革命時代の勢いに乗り、フランス人「アントワーヌ・ラボアジエ」「クロード・ベルナール」により礎が築かれています。
    また、「ジェームス・ワット」の蒸気機関は熱力学やエネルギー保存則発見の素地となりました。
    それらは、 生化学・栄養学に拡がりながら、現代人の抱くカロリー出納観(※6)を形成して来ています。
    例として、呼吸生理の最有力指標※7としての【酸素摂取量】は、この歴史の寵児と言えるでしょう。
    ここでは、その歴史の流れを把握しつつ、対する吸わないトレーナビリティー理解の基礎とします。
    アントワーヌ・ラボアジエ:18Cフランスの科学者、酸素の命名
    クロード・ベルナール:19Cフランスの科学者、ホメオスタシスの発想
    ジェームス・ワット:18Cスコットランドの発明家、蒸気機関
  • 1-3 オリエントの調息文化
    印度・中華に代表されるオリエント世界こそ、仏教/道教を背景とした調息文化(※9)のメッカです。
    その文化は、修行 修業 養生 武術 芸能等の領域で育まれながら、現代に至るまで存在し続けています。
    調息の細やかさを示す言葉に、七つの口片(※10)として認識されているあたりは、その奥深さの一端を指し示すものでありましょう。
    ここでは、オリエントの呼吸世界に足を踏み入れます。
  • 1-4 海女の生理学
    ビーチコーミング(※12)から素潜り漁への変遷は、海へ戻ったイルカ・クジラなどの海洋哺乳類を彷彿とさせます。
    彼らには、軟骨で鰓呼吸の生きた化石サメ、とは違った逆適応が視られ、水と呼吸を再び克服した姿が確認出来ます。
    人間世界の海女文化とその身体も、イルカとクジラに似た特性を示しており、吸わない身体の体現を見ることになります。
  • 1-5 呼吸力強化術
    進化の流れの中で、動きと呼吸の分離に成功したかのように視える哺乳類ではありますが、未だ不完全さを残しています。
    そこで、海女に学ぶ”吸わない適応”をトレーニングにより引き出し、陸生(※12)の矛盾を大きく低減させます。
    吸わないフィットネスを、ここで学びます。

※1 ヘッケルとは、19Cのドイツのダーウィン派の進化学者「個体発生は、系統発生を繰り返す」の文言は著名。
※2 系統発生とは、ある生物種が、過去から現在までにたどった進化過程のこと。
※3 生命振幅とは、宇宙の生命現象は全てリズム運動を背景にしていること。
※4 呼吸振幅とは、呼気と吸気のつくる波のこと。
※5 自己増殖・エネルギー変換・内外隔離とは、生物を定義するための3つの条件であり、遺伝/代謝/膜と言い換えることも出来る。
※6 カロリー出納観とは、エネルギーの出入りを全てカロリー単位に換算して考えること。
※7 呼吸生理の最有力指標とは、数ある呼吸生理指標の中で最も重要視されているもの。
※8 トレーナビリティーとは、被訓練性、介入により変わる可能性を持つこと。
※9 調息文化とは、呼吸を制することによる自己開発を主眼とした修身と、その実践思想。
※10 七つの口片とは、泗「スー」・嘘「シュイ」・呵「ホー」・吸「シー」・嘻「シー」・吹「チュイ」・呼「イフ―」
※11 ビーチコーミング: 海洋漂着物の収集行為、元来は、食物確保の重要手段であった。
※12 陸生とは、地球における陸地に生息すること。または、動物の意。

6.絶対動感
-Absolute Time-

湧き上がる動感メロディー(※1)こそ、ヒトを動かす最大のエネルギーであります。
それは、音とも言い、リズムとも言い、言語とも言い、見えない世界からオーケストラ指揮者の如く、動きを導いています。指揮者のタクトが、各演奏家の表現と同時に、楽団のハーモニーを創り出す様は、そのまま筋の収縮と運動表現の関係性を視るようです。
ヒトを湧き立たせ、共鳴させるタクトの正体は、動感性として、大いなるトレーナビリティー(※2)を持っています。コーチングアーツの提案する絶対動感「AT」(※3)の概念と実践は、 音楽界の絶対音感「AP」(※4)の横に立つものであり、ヒトの運動行為の新しい解釈へのキッカケを提供するでしょう。

  • 1-1 生態リズム論 ~音・言語・運動のトライアングル~
    回転・周期・振幅は、あらゆる現象を解明する重要な視点であり、生物は最たる体現者です。
    それら、別名”リズム”と言われるエネルギーは、マクロに視れば天体運行から、ミクロに視れば眼前のヒト跳躍運動までを創る、共通の仕組みであり、音/言語/運動のトライアングルを繋いでくれます。
    ここでは、自然界に潜むリズム運動に焦点を当て、その実態を把握します。
  • 1-2 音響学と西洋音楽
    音律・楽譜・メトロノームに代表される西洋音楽は、人類の音とリズム世界を席巻して来ています。
    それは、ピタゴラス/ベートーヴェン/オペラ/バレエ/ダンス/ダルクローズ/ラバン等を経て、エアロビクス・ヒップホップ・ユーロビート・リベルタンゴに至ります。
    日本に於いては、明治期の滝廉太郎より邦楽に音符が与えられ、同時にダンス文化の輸入がなされて来ています。
    そういった音楽とリズム、そしてダンスの世界史を大きく見て、音世界に踏み込みます。
  • 1-3 日本のリズムと声明学
    音への感受性は、文化の違いに直結します。特に日本人の感受性は、欧米人と大きく異なり、詩歌/舞踊/武道等の世界に良く現れています。
    歴史を診るならば、読経声明(※5)こそ、その始まりであり我々の遺伝子レベルまで浸透している、と言えるでしょう。
    演歌などは、その唯一の遺物なのです。
    ”リズムは文化”の言葉の通りに、その重要性を捉え、日本人リズム感性に迫ります。
  • 1-4 音楽界の絶対音感(AP)とスポーツ界の絶対動感(AT)
    音楽への適性としての絶対音感(AP)は、信頼される基準として運用されて来ています。
    また、指揮者「岩城宏之氏」(※6)が云う「音楽家は、スポーツマン だ!」との比喩は、音楽と運動を繋ぐ橋のようです。
    それに対しコーチングアーツは、音・言語・運動のトライアングル視点 から、スポーツへの適性としての動感教育:リズミング(※7)を提唱実践します。
    絶対動感(AT)は、メタフィジカル能力(※8)の中核であり、高いエネルギーで動きを導きます。
  • 1-5 絶対動感(AT)形成法としてのリズミング
    動感メロディーの創発と促発(※8)に導く、絶対動感(AT)形成法としてのリズミングトレーニングを学びます。
    一般には、リズム感性として巧緻性(※9)の中に位置されており、近年のダンスとの融合は効果的体得への手がかりを示しつつあります。
    コーチングアーツでは、このリズム感性に対し、文化側面・生物側面から抽出した方法で介入します。

※1 動感メロディーとは、金子運動学用語、ヒトの動作は音楽メロディーのように、一体化した流れ・リズム・時間を持つ意味。
※2 トレーナビリティーとは、被訓練性、介入により変わる可能性を持つこと。
※3 絶対音感とは、ある音を聴いて、その音高を記憶に基づいて識別する能力
※4 絶対動感とは、ある動きを診て、その支配するリズムを即再現出来る能力
※5 読経声明とは、仏教の教典に音律を持たせて、詩歌のように朗々と読むこと。
※6 岩城宏之とは、日本の指揮者、打楽器奏者。東京音楽大学卒業。
※7 リズミングとは、元東京教育大学教授松延博先生の提示した、リズムトレーニング用語
※8 メタフィジカルとは、フィジカルの対義語であり、ヒトを動かす視えないエネルギーレベルのこと。
※8 創発と促発とは、学習者自身による進歩創造(創発)/支援者による進歩演出(促発)
※9 巧緻性とは、きめ細かく上手になす感性の総称

7.内臓力
-TAN- (丹/胆)

脳・神経・筋(体壁系)の働きに対して、内臓系(※1)は、無自覚に密接に作用し続けています。
それは、一体化し、ヒトらしさを創る体壁系(※2)を支える基盤となっています。
健/強/美/巧/速/耐/鋭(※3)などの漢字に示されるあらゆる身体知(※4)は、内臓系なくして成立しません。
発生史を診れば、内臓は体壁に先んじており、脊椎動物の潜在能力の場と言えます。
ここに、歴史・現代論理・臨床を交えて考えるとき、動物基礎体力としての『内臓力』が浮かび上がって来ます。
コーチングアーツは、この内臓力を現代のフィジカル・スキル能力の土台として定義し、具体的に解説いたします。

  • 1-1 内臓力の提唱 ~ホリスティックトレーニングへの誘い~
    福岡伸一氏の著著「世界は分けてもわからない」の言葉を借りますと、モノを分けて視ようとする態度は一段落して、世の中は全体性を重視する時代が来ています。
    中でも、動物身体における内臓は、脊椎動物の象徴である体壁と対になり、全体を構成する重要領域です。
    古代の中医学(東洋医学)の云う、本道(※5)こそ、このことであり、 脳・神経・運動器のみに偏らないホリスティック(※6)視点の復活を提唱します。
  • 1-2 体壁系と内臓系、その発生史と重層連関
    発生進化(※7)における【メタモルフォーゼ】(※8)に対し、体壁と内臓の双極性を【易】(※9)の陰陽を用いて、具体解釈します。
    これこそ、ホリスティック論理の重要な考え方であり”行為するヒト科”の実態に迫ります。
  • 1-3 脳腸相関と腸内フローラ
    近代医科学の発展は、多くが外科に負って来ています。
    しかし、昨今の視点はその方向性が内側に向けられつつあり、これからの時代における好奇心の的となるでしょう。
    中でも腸の働きには、五臓六腑のネットワークを束ね、新たに脳と連動する姿が見出されています。
    これは、そのまま食と性に生きる定めの生物実証と言えるでしょう。
    ここでは、内臓力の中核を司る腸に対し、脳腸相関(※10)と腸内フローラ(※11)に狙いを定め、解説します。
  • 1-4 振動耐性という新指標
    「脱腸と船酔いは、ヒト科永遠のさだめなのでしょうか?」
    この素朴な疑問に答えようとするときに見出された概念こそ、提唱する”振動耐性”(※12)です。
    脱腸や船酔い症状の原因は、ヒト科の直立性獲得そのものであり、未完成なる進化といった解釈につながっています。
    【振動耐性】は、個人差はありつつもふんだんなトレーナビリティーを残し、基礎体力指標としての運用を待っています。
  • 1-5 内臓力強化術
    ヒトの内臓力を強化・改善するに際しての、5ポイントを解説します。
    この具体的介入は、身心の 健 強 美 巧 速 耐 鋭 を導き、 脳と内臓の一体化を再確認させるでしょう。

※1 内臓系とは、呼吸 消化 内分泌 生殖 泌尿の5つの系(総じて、植物性器官)
※2 体壁系とは、脳 神経 骨 筋の4つの系(総じて、動物性器官)
※3 健/強/美/巧/速/耐/鋭とは、ヒトのからだのより良い働きを象徴する頭文字群。
※4 身体知とは、頭脳知に対して、からだが知っている、分かっている内容を現す抽象造語。
※5 本道とは、中華漢方の云う旧来の内科
※6 ホリスティック(holistic)とは、ギリシャ語のholosを語源とし、全体・繋がり・バランスの意
※7 発生進化とは、生殖による生物の発生から、順に現れる変化進化のさま。
※8 メタモルフォーゼとは、メタ(後に、超越した、高次の)?モルフォーゼ(形態、構造)に分割される用語で、合わせた意味は、変身 変態 となる。
※9 易とは、中華周代に生み出された、易経の原理に基づいて為される占いの方法、やさしい、かわるの意
※10 脳腸相関とは、脳と腸の働きが関係しあう現象の総称
※11 腸内フローラとは、腸内細菌のバリエーション豊かな様を花畑(フローラ)に例えた造語
※12 振動耐性:腹腔内臓群の位置的動揺と、対する固定・復元力の意 ※コーチングアーツ提唱概念

8.究極平衡
-Equilibrium-

「ヒトはなぜまっすぐ歩けるのか?」
この素朴で難解なテーマに対し、準備出来る唯一の答えは、動的平衡(※1)です。
動的平衡の解明こそは、ヒト科を識ろうとする近道であり、”全ては相対の中にあり”との法則へ導いてくれます。
また同時に、重力空間での運動成果を左右する、重要な因子としての実態を見せてくれるでしょう。
コーチングアーツは、上記テーマを多視点で取り囲み、ヒト運動能力の源に迫ります。

  • 1-1 重力とヒト ~宇宙時代に捉える、めまいと平衡~
    宇宙開発・デジタル化促進は、共に地球から宇宙へと、我々の視野を拡大してくれます。
    また、空間に生きると生命というテーマを身近に感じさせるものであり、あたかも中世コペルニクスの「地動説」(※2)を想い起させます。
    この流れは、我々にとっての空間の意味を、過去になく明確にするでしょう。
    ここでは、重力現象の意味とヒト平衡性に迫ります。
  • 1-2 平衡器の進化と姿勢 ~ヒト科のボトルネック~
    地球上に生息する動物は、発生において身体の極(※3)が現れ、環境に応じた平衡器の適応・進化を成して来ました。
    ここでは、それらの流れと様相を眺めつつ、ヒト直立姿勢に至る実態を捉えます。
    また同時に、直立の弱点を抽出し、平衡定位機能の理解を深めます。
  • 1-3 福田平衡医学の復活
    海外に良く知られる日本人は多くいますが、福田精氏(※4)もその一人であります。
    氏の主たる業績は、バラニーの呪縛(※5)を破り、平衡医学の世界に包括視点の必要性を説いたことです。
    また、それらの成果を駆使して帝国陸海軍に奉職し、精鋭パイ ロット達を養成したことを忘れてはなりません。
    コーチングアーツは、福田平衡医学を今に復活させ、未来に発展する土台を形成します。
  • 1-4 日本のパルクールとしての征空體育
    第二次世界大戦に於ける帝国間の大艦巨砲主義から、空母を中心とした機動部隊主動への戦術転換に際し、「征空」の用語が登場しました。
    それは同時に、航空機パイロットの空間暴露耐性の研究に繋がり、今に至る航空医学を創って来ています。
    中でも当時、考案・実践された征空體育(※6)は、最大の特長成果であり、その足跡は現代宇宙飛行士に引き継がれています。
    ここでは、当時の内容を掘り起こし、そのエッセンスを今に活かします。
  • 1-5 空間識とヒト
    ここで意味する空間とは、縦/横/高さ(=3D)に代表されるニュートンの物理空間と、イデア(※7)の云う認識空間の双方を捉えています。
    ヒトにおいては、この2つの仕組みが協力して特有の空間認識が創られています。
    この感覚モダリティ(※8)は、身体の動員により獲得され、 運動や言語の学習に深く関わっています。
    教師/指導者/コーチにとって、この領域の具体把握は、非常に重要です。

※1 動的平衡とは、物理化学用語の拡大解釈で、ミクロに見ると常に変化しているが、マクロに見ると変化しない状態のこと。外見上の定常状態。
※2 コペルニクスの地動説とは、16Cポーランドの天文学者コペルニクスが提唱した、太陽中心説
※3 極(極性): 生物身体の形態を分類する視点。例)頭ー尻/前ー後/上ー下
※4 福田精とは、故岐阜大学名誉教授、現代平衡・姿勢医学における偉大な成果を残した研究者
※5 バラニーの呪縛とは、ロベルト・バラニーが発見した、「前庭迷路の反応=温度性眼振の発来」という等式を盲信していた、世界の耳科学業界の態度を風刺した表現。
※6 征空體育とは、プロペラ機パイロットの空間識とG耐性向上を目的として創られた、訓練法
※7 イデアとは、視覚に反映しない想念上のこと。視えない世界、理想世界のこと。
※8 モダリティとは、 moodムードの語形変化であり、ヒトの感覚における様相・様態・様式のこと。

9.フィンガーワールド
-Hand & Finger Training-

一文を紹介します。
「学びとは、つまんで 捏ねて 撫でて 識る」
捏ねて:こねて/撫でて:なでて/識る:しる
この意味することは、「ヒトはあらゆる可能性を、手指に宿す」であります。
その領域は、精神・意思・学習・創造・運動・表現・伝達・言語・手当て等に拡がり、第二の脳と云われる由縁となっています。
故に、技芸の達成力を願うとき、手の持つ学習性、に働きかけることは、定石と言えるでしょう。
コーチングアーツは、ヒト能力の源泉である指の感性を磨きます。

  • 1-1 鰭から体肢への進化 ~四肢と舌のものがたり~
    海洋生物の実態を知ることは、そのままヒトを識ることに繋がります。
    ここでは、鰭に由来を持つ体肢と舌の進化足跡を辿り、器官としての生物的意味や、その潜在可能性を紐解きます。
  • 1-2 陸生脊椎動物の能力を創る体肢
    海を捨て、陸地で生活することに挑んだ動物群の進化象徴こそ、体肢であります。
    それは、食と性の獲得と安定への動機に支えられ、空間・時間・圧・温度・水・呼吸といった環境圧との戦いでも主役を演じています。
    ここでは、陸で生きる動物の姿を、体肢から眺める眼を養います。
  • 1-3 「手は外に出た脳である」~10の29乗とデクステリティー~
    近世プロシア(現ドイツ)出身の哲学者イマヌエル・カントが残した名言であります。
    こういった哲学の認識が、現代脳科学により徐々に解明されつつある今、あらためてヒトの指機能を多角的に捉えます。
    また、近年の知見である、10の29乗(※1)が創る巧さ(デクステリティー※2)と、その人間的意味にも迫ります。
  • 1-4 世界を識る全人器官 ~クロスモダルの象徴~(※3)
    「把握」の言葉に代表されるように、ヒトがあらゆる外界環境を知覚・認知・理解・操作に供する手は、触覚器を越え、モダリティ(※4)同士をまたぐ全人器官(※5)として働いています。
    しかし、その働きは、日常の人間生活に埋没しており、あらためて実感することはあまりありません。
    そこで、獲得と喪失/投企と抽象/重力と生命、といった飛躍した視点で取り囲み、指に隠された性質を把握します。
  • 1-5 指(手/足)トレーニングの実践
    動物として、ヒトとしての行動行為やパフォーマンスを磨くに際し、指の養生とトレーニングは欠かせません。
    その実態は、握力計による測定値のみで解決されるものではなく、介入の取組も多様になります。
    この実践では、指動員の多様性をまさに把握すると同時に、トレーニングを実体験します。

※1 10の29乗とは、手指の骨格筋、神経支配組成から導き出された、操作可能性を表す数値
※2 デクステリティー(dexterity)とは、「器用さ・機敏さ・巧妙さ」の意
※3 クロスモダルとは、様々な感覚器が交叉して知覚する現象、共感覚。
※4 モダリティとは、moodムードの語形変化であり、ヒトの感覚における様相・様態・様式のこと。
※5 全人器官とは、運動/精神/関係/創造/表現等、人間機能のあらゆる側面に関わる器官のこと。