獲得と喪失

 CAは、根底の発想に「What is human?」(:人間とは如何なる生き物か?)を常時に携えています。その意図は、この命題に肉迫する以上に、指導感性に響く材料は無い、との認識からであります。十全に分かり尽すことは有り得ないにせよ、周りから浮彫にする努力は、決して無駄になりません。今回のテーマも、勿論にその一環となります。考えてゆく上では、哲学/脳科学/臨床、と少なくとも3つ以上の視点で取り囲む必要はあるでしょう。

 話を具体的にして行きますと、障害者のリハビリテーション パラリンピック競技者のトレーナビリティー が焦点になります。これこそは、我々の脳機能における真骨頂『可塑性:plasticity』の成せる業であり、ヒト可能性の究極現象と出来るのです。故に、例え健常者を対象とする立場であろうとも、この領域への理解は必須のことになる筈です。何故なら、失って見ない限りには、五体満足の意味が立ち上がって来ないからです。その指一本が、全体の中で果たしてどのような働きをしているのか? これを知らずして、効果的に全体性を引き上げる事は、返って至難の業になるかもしれません。

 2つほどの例示をします。

 1つは、米国のパラリンピック競技者(車椅子ランナー)である、タチアナ マクファーデン です。この方の圧倒的な能力は、「超適応」と命名されており、脳科学でも注目されています。いわゆる、ホムンクルスに代表される脳地図がここまで書き換わるのだ、と実証した貴重な例です。下肢障害が生得的であったことと、境涯の過酷さが大いに影響しているとは言え、適応とも学習ともつかないヒト可変力を、生々しく見せてくれます。

 2つは、脳卒中による片麻痺障害からのリハビリテーションに、新しい世界を切り拓きつつある”認知神経リハビリテーション”です。ここでは、旧来のバイオメカニクス解釈の限界性を越えて、「学習と教育」を通した脳可塑性を引き出そうとする手法を取り、残存機能でのADL復帰以上の効果を見出しています。これからのリハビリテーションルネサンスは、認知神経から始まると確信しています。この紹介は、前回ブログでしていますが、健常者のトレーニング世界が、いの一番に追わなくてはならない領域です。

 このように書いて来ますと、特殊さを感じさせるかもしれませんが、決してそうでもありません。身近に言えば、こういった喪失法は日本の古武道における基本訓練では当たり前のことでありますし、身体的弁証法としての共産圏コオーディネーショントレーニングでも大事な概念となっています。正に、『正反合』こそ、ヒトの認知性を自然に生じさせる外せないプロトコルであるという事実なのです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

4 × five =