トレーニング論 5つの視点❺

❺ 医療業界の先行

 私見としての視点群を締め括る、5番目のテーマは、内容そのままに「医療業界の先行」です。言うところの、スポーツ医科学、なる用語を使うならば、全ては拝借以外の何者でもありませんので、先行は勿論のこと。しかし、特にトレーニング・運動学習にまつわっても、革新的一歩は医療業界が先行しています。その一端をご紹介したいと同時に、”まさに倣うべし”と強く感じるところです。そのキーワードは、『認知』であります。社会的には、高齢化が拍車を掛ける中、”認知症”の言葉とともに使われる頻度が大幅に増えて来ました。また、AI技術を支える論理支柱も同様です。一言にヒトの認知現象を説明することは到底に出来ませんが、敢えて表現すると、「身心相関論」といったところでしょう。心とからだを、分けて考え扱って来た中で、解決の付かない症状・現象が多くあり、それに対して身心統合視点からアプローチすることにより、今までにない効果性が見出すことが確認され始めているのです。哲学表現を使うならば、形而上/形而下の繋がりを臨床現場にに活かす、とも言えるでしょう。これは東洋思想(印度・中華を暗示)では当然なことではありますが、異、西洋医学界での具体的取組は医療ルネサンスに値することと感じられています。それは、「認知神経リハビリテーション」であり、PT/OT/STといった、リハビリテーションセラピストの方々が創り上げている領域です。この世界では、今までの典型的理学療法に於ける”身体機械視”からの処方から、ヒトの認知性/学習性/脳可塑性に具体的に働きかけることによる、機能再生を目指します考え方や手法の輸入先は、イタリアであり、世界史上の文明起点となったルネサンスの地なのであります。これも決して偶然ではなく、奇しくもイタリア、だと感じています。同時に、ミラーニューロン発見への先鞭をつけたのも同様である事実は、西洋哲学(:ギリシャ哲学)が陶冶された力の表出と出来る、と言い切れる筈です。具体的内容は、他の機会に致しますが、まずは紹介したい意図であります。

 こういった領域が我々のトレーニングや運動学習に全く無いのか、と言いますと決してそうではありません。脚下照顧、スポーツ運動学:金子学派が厳然として鎮座しています。しかし現状を診れば、フィジカル スキル と言った一見の用語に席巻され、奥之院に潜んだままであります。ここから言えることは、リハビリテーション世界のルネサンスを凝視しながら、我々も遅ればせながらルネサンスを迎えることに尽きるのです。

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