解剖 3
自身が日々に四肢獣解剖する手順は、内臓抜き → 皮むき → 頭部外し → 末端(蹄)外し → 脊柱割り → 主要臓器切り取り → 骨格と筋肉の分割 といった流れで行っています。いわゆる、川上から川下まで、と言いますか、頭蓋以外はバラバラにしています。診方によれば、残酷 グロイ のそのままかもしれませんが、解剖研究とすれば当然の行為になります。リアル解剖実習そのままです。四肢哺乳類で、進化もある程度まで遂げている動物であれば、臓器の構成や位置関係は人間とほぼ同じなので、そのまま人体解剖になぞらえて考えることができます。大東亜戦争の体験軍人から聴いたことによりますと、臓器の出す臭い(生体/死体ともに)は、人間も四肢哺乳類も同じだ、とのお話でしたので、内部の働きは大きく変わらないのでしょう。しかも、こなす数も一日で数体は関わるので、貴重で豊富な臨床実感の場となっています。この状況は一般世間の中では、食肉生産のための屠殺場が唯一ですが、数百をこなす業務を考えると、ゆっくりと観察もままならないと思います。また、遠藤秀紀先生がそうであるように、獣医の世界が近いものであります。CAが、古代の中華養生(武術)文化の中心にくる、五禽戯を提唱した『華佗』を調査するなかで、彼が動物学の大家であったという事実は、関連する重要な知見となっています。故に、少なからず希少なる場にいる意味で、その感慨や発見をご紹介して行きたいと思います。
解剖による進化足跡の研究、とした場合、焦点をどこに当てるのか、これも大事な視点です。脳 神経 感覚器 運動器 骨格 靭帯 関節 皮膚 内臓(総称)のどれを診るのか、または全体構成・配置、全身的形態等、その方の感性次第ということになります。その意味で、自身は今、還元論以前の極性視点で診ようとしています。極性視点とは不可解と思いますが、陰陽太極と言えば理解していただけるでしょう。生体全体を大きく、内臓系 と 体壁系(脳/神経/筋)に分け、その相関性とバランス、裏側に潜む進化動態を推察します。結果的に、有機体生命現象の形而下特性を捕まえたいと考えています。こういった視点は、著名なる メンデル ダーウィン を中心とした進化論者系譜に繋がる、ゲーテ(生物の形態論)から、 三木成夫 西原克成 に引き継がれて来ているものであり、CAもその流れの一端を引き受けています。生物科学の先端認識が、東洋思想で裏打ちされる現代知性、を象徴する領域である実感は非常に強いものがあります。
上記の極性視点は、次回にお話します。