ヒューマニエンス「”IPS細胞”と私たち」を視て

 明けましておめでとうございます。今年こそ、人類のコロナ克服年になることを心より願います。

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 当コーチングアーツブログは、コーチング界へ向けて、変わらず二ひねりしたブログを書いてゆこうと思いますので、動画共々どうぞよろしくお願い致します。

今回は、身に余る巨大テーマの登場です。同内容は2回放送されましたが、2022年を迎え、満を持しての感想です。

新進気鋭IPS細胞研究の所在は、そのまま発生・遺伝のカテゴリでありますが、含めて『人間とは何か?』へ突き進むための視点を、”現代五行”として表現させていただきます。

 生物学(発生・進化・遺伝・環境・生理・解剖・動植物)

 ❷人文科学(歴史・哲学・思想・地理・東西論)

 ❸宇宙科学(NASA/JAXA・気象・地球・惑星・衛星・自転公転)

 ❹認知科学(脳・知覚・認知・言語・身体・学習・教育 👉 AI技術)

 ❺量子論(素粒子・空間・時間・脳・意識・エネルギー・重力)

 この五行、学際を意図したときには不可欠であり、互いに連関するのが実態です。ゆえに、有益な類推・連想・創造の背景になります。自身も、常時携えており、皆さんと共有したい肝と言って良いでしょう。今回のIPSは、コーチング業界で最も必要とされる生物学視点に属するものですので、そこへ向けて意識を傾けるには絶好機と捉えています。

IPS日本語正式名称(人工多能性幹細胞)京都大学山中伸弥教授による研究業績と、世界的影響(2012年ノーベル医学生理学賞)

★受精卵から身体各部位の細胞への発生・変化プロセスの中間に位置する、遺伝子上、ニュートラル状態の細胞

 【子】医療活用

 ここが主役になるべき領域であり、いわゆる先端医療業界への凄まじいインパルスとなっているようです。紹介されたのは、難病指定のALS(筋委縮性側索硬化症)への適用/ガン免疫療法におけるNKTcellの活性/再生医療での臓器移植ではない、オルガノイド置換術、の3臨床でした。中でも、最も興味を引かれたのは、マウス治験という既存制約を取り払う、IPSにより創られた疑似人体環境での薬理効果検証です。これは、薬の新しい定義手法になる可能性と同時に、マウスとヒトとの大いなる違いに引き戻される重要件が潜んでいます。同じ哺乳類に属し、運用が容易であることから実験の常道とされて来ていますが、この事を以て、ヒトの特異性が更に際立つことになるのです。

 【丑】科学革命:シャーレのなかの生命時間

 番組内では、”科学革命”なる力強い表現で冠られていましたが、その象徴は「時間現象」を巻き込むことがゆえであります。IPSは、分化を終えた部位細胞を受精卵後の状態に戻すことで創られますが、そのこと自体が、生命時間を誘導する/発生を操る、のであり、云うならば神?の領域への介入に繋がる可能性を意味しています。IT用語を援用すると、「細胞の初期化」となり、旧来のES細胞の人体侵襲という限界性を取り払うことと合わせると、自在な応用展望と同時に、倫理問題と隣り合わせることになります。この論調に対し自身が感ずることは2つあり、1つがシャーレ・試験管の中での実験時間と天体の回転が演出しているであろう時間は果たして同じなのであろうか?という疑問、1つが太陽系宇宙空間・地球磁場圏における時間・重力の生命現象との関わりという最も普遍的な視点の欠如指摘、です。これこそ、マクロとミクロの相対論になりますが、局所視点のみに奪われると絶対的に見紛うヒトの属性を想うと、その轍は踏みたくないのです。

 【寅】細胞のちから

 上記に続く疑問は持ちながらも、示される発生の妙は好奇心を揺さぶってくれました。学術で拓けない領域は未だ殆どではありますが、発生も典型的なブラックボックスのままであります。そこに於いて、消化器(肝臓・胆管・胆嚢・十二指腸)の前腸/中腸を始原とするハーモニーとしか現しようのない、連動発生・分化現象の再現は驚きの一言です。やはり唯一最高のキーワードは、ハーモニー/調和に尽きるのではないでしょうか。あらゆる遺伝する可能性は、細胞同士の出会いと結合配置、周辺環境という相補因子があってこそ立ち上がるという事実を、あらためてミクロ世界から教えてくれています。このことは正に普遍則として、人間の知的運用の中核に坐すべきなのです。

 【兎】サムシンググレート

 故村上和雄先生の言葉をお借りしました(2021年4月永眠)。村上先生が、長い遺伝子研究の中で掴んだ、その発現起因と可能性を総じて創られた表現であり、ヒトを突き動かす偉大なる何か…と含意されています。個人的には以前より共鳴するところがありますので、重ねて使わせていただきます。その心は、山中伸弥先生が出された挙句そのままです。いわゆる、研究者として死に体であった状況から、諦めない姿勢・徹底した探求心・こだわり・投入・自己犠牲の暁に見出した、起死回生の成果であったという実態なのです。これこそは、サムシンググレートのリアルであり、お二人が重なって見えています。その教育的価値は、非常に大きいと言えるでしょう。

 【辰】脳オルガノイド

 この領域は、医療を越えた様々なる応用可能性への先行事例として捉えています。番組内では、アメリカ/カリフォルニア大学での研究成果が紹介され、ネアンデルタールとホモサピエンスの脳内神経ネットワーク構築の差異と、それが創る能力・文化・社会の特性が示されました。形態構造的にも殆ど変わらないネアンデルタールとの脳細胞機能差が、種の保存の最大因子になった可能性は、ヒトを説明するに欠かせない視点です。ゆえに逆から言えば、そこを賦活することは、そのまま現行人間の能力開発になるのです。事実、IQ値含めた優れた感性(知性・身体性含む)を発揮する人間特性の中に、脳内神経ネットワークの密化、言い換えれば、包括性/博識性/抽象性が見出されます。さすれば、その賦活術も同時に浮かび上がって来ます。IPSは、教育観念にも大きく影響することは違いないでしょう。

 【巳】生殖という神秘

 こここそは、禁断の園であり、生物の存在動機最大である生殖現象に介入しようとするのです。それは、旧来の不妊治療における体外受精を越え、より究極点に至りそうな気配を醸します。その気配は、クローン羊のドリーから始まりますが、IPSの登場を迎え、喫緊の倫理課題を突き付けられています。これは、アイデンティティ含め、せめてもの総合解釈が求められるところであります。番組内で紹介された、マウスの正常なる誕生・成育は、脅威さえ感じさせるものでした。しかし、ここでも上記したマウスとヒト(サル含む)の絶対的差異の壁が立ちはだかっているようで、受精にまでは誘導出来ない難しさと複雑さが存在するとのことです。このことを聴いて、変に安心したのは私だけでしょうか?人間とは何か?を考えるに際し、生殖が解明されてしまうことは一つのゴールを意味しますので、そこに至るまでには、もう少し我々人間業界の苦労が必要とされて良いと強く感じています。

★★★最後に、コーチング界においても、あらためて足元に「人間探求眼」を据える必要性と有効性、そして、その視点にミクロ性とマクロ性を問う感性を共有しようと誓う年始です。

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