「いやはや鳥人だ!!」

 このフレーズを見てニンマリと反応回顧する方は、50歳以降かもしれません。ご存知の通り、1980年代にテレビCMで使われた文言です。CMの内容は、タケダ薬品アリナミンAのPRで、演じたのは俳優の名高達郎さんでした。このCMシリーズでは、ニンニク抽出成分の薬効をアピールする為、肉体酷使のシーンが多く作られ、特に前回ブログでご紹介したノマド世界の身体文化やペルシャ・インド武術が紹介されました。どれも、貴重な現地取材・撮影であったようで、単なるCM素材を越えて、大陸身体文化集成のような見え方をしています。どうしても、欧米より縁遠くなっている地域ではありますが、あらためて関係の深さを再認識したいと思います。いくつかの例示をするならば、サイコロ/将棋/トランプ・かるた/ブランコ/相撲/競馬…等は全てペルシャ・インド地域の出自であり、日本文化にも十全に伝搬している足跡が感じられます。こういった事を切欠にして、欧州圏以外の大陸に眼を遣り、大陸から日本列島を臨む行為は、大変に重要な営みになります。

 「いやはや鳥人だ!」のフレーズで紹介されるインド武術(:カラリパヤット)は、インド西南部のケーララ州を中心に伝承され、現在にも残る貴重な文化財です。その思想と実践は、当然にヨーガとの連関も強く、原始仏教やヒンズー教(リグヴェーダ)にその源流を診ることが出来ます。体系は、薬草/施術/体術/武器術、と多岐に渡り、完全なる「行法」と言えます。中でも注目するところは、CMを診れば一目瞭然の”圧倒的な柔軟性と跳躍力”に象徴される体術であります。現される能力は、近代スポーツなど消し飛んでしまうくらいの達成度であり、直立性の上限を魅せられるようです。また、その全ては、動物回帰の思想を背景にしており、古代に想いを馳せることに繋がります。この思想は人類・大陸共通のものであり、中華の『五禽戯』などとの関係性を紐解くことは、探求心の踊る場と化しています。”人間生活と動物”というテーマは、一つの終極に位置するゆえ、最高の題材なのです。

 第二の注目は、カラリパヤット行法の一部として行われる、施術効果・訓練の双方の目的を持つ”足圧整体術”であります。実際の臨床では、施術を受ける側が全身にオイルを塗布し、皮膚の滑りを良くしつつ、施術側は滑る皮膚の上に裸足で乗り、足圧(体重)をかけて行われます。この技法は、人体に負荷される縦圧(重力圧)からの解放と衛血循環を、手指・肘の限界性を越え、自在に為しうるという意味で最も効果的と思われます。CMには出ていませんが、カラリパヤットを語る上では外せない内容ですので、紹介した次第です。ちなみに、この技法は大陸伝搬から日本海を越え、日本に伝わっており、古来より「武」の世界が引き受けて来ています。CAが施術技として伝えている「古武道式按呑流按摩術」は、この系譜に属する財になっています。

総じて、今回も欧州圏以外の身心文化への啓蒙を意図したいと思います。

※アリナミンのCMシリーズは、youtubeで視ることが出来ます。

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