現代が過去とつながっている・・・
この表現は、CAの探求キーワードにもなっている大事なものです。これが身に染みて感じられた時、今よりもっと診えてくるのかもしれません。一般的には、「縦断的視点」と言いますし、英語では”hi-story“(意訳:流れ/鳥瞰)でしょう。どこまで深堀するかにも依りますが、存在の地歩を知り、認識をより確かな状態に引き上げることになります。これが歴史の力であり、『ルネサンス』の実態であった筈です。その動機は、「見たい、知りたい、分かりたい」という知的欲求の爆発、と言われている通り、前後の影響を考えると、西洋史を考える視点中心になることは正に肯けます。正確な意訳は、”再生/rebirth”で間違いないと考えます。日本では”文芸復興”などと訳されているので、その理解が曲がってしまっている恐れがありますので、折を見て何度もお伝えしたいことです。もし、具体的に覗こうと思われた方は、塩野七生さんの世界に没入する事をお奨めします。「ルネサンスとは、何であったのか」新潮文庫版 辺りはその直接のテーマになっています。過去からの流れの中での今、あらゆるモノが時間と空間の中で繋がりながら、相互に影響し合い進みゆく実態、そして先端としての現代様相を実感する。結果として、「何故?」が氷解してゆく”快”。即、エビデンスだけを手間を掛けずに求める世相に比すれば、不合理と揶揄されそうではありますが、何故 → 何故なら、の繰り返しの先にしか、「分かる」状態が存在しないのならば、好奇心のまま行こうではありませんか!
昨今、その快を与えてくれる場は決して多くはありませんが、中でも”塩野ワールド”は貴重な場となるでしょう。イタリア語 フランス語 ギリシャ語 ラテン語 を駆使しながら、古代地中海文明文献を読み漁り、ローマ世界 → ギリシャ世界 を史実の積み重ねではなく、storyとして観させてくれるのです。膨大なる資料解析と、鋭敏なる推理・解釈眼、それを元に物語を再構築する感性と文章表現力、は作家という属性の方にしかなしえない産物ではないでしょうか?これはいわゆる、天才の業です。実際に女性でありながらの、古代戦闘シーンの描写などは見事と言えるでしょう。そこでは決して、夢うつつ、に陥ることではなく、如何に現代ヨーロッパ(ECーEU)の原型がここにあるかという事実への気付きに繋がります。当然に、今回の英国離脱の深層心理もここに隠されている訳です。縦断的視点の意味や価値は、こういったところに表出しますし、彼女のイタリア文化勲章受章、という意味が良く分かります。代表作「ローマ人の物語」全15巻は、様々な言語に翻訳されながら、世界に拡がりつつあります。欧州拝外志向が強い中、地中海世界へ本格的に足を踏み入れてみませんか?
ちなみに、塩野七生さんは「ギリシャ人の物語」全3巻で筆を置かれたようです。以降は分かりませんが、その世界を引き継いだ方もいらっしゃいますので、ご紹介します。本村凌二さん(東京大学名誉教授)が、実質的にその位置にいる方です。ご自身もその自覚をお持ちだろうと感じています。多くの書籍がありますが、「帝国を魅せる剣闘士」山川出版 は現代の欧州サッカーやラグビーに繋がる民族感性の原点を感じさせてくれますし、映画「グラデュエイター」と共に、コロッセオ文化を想い起こさせてくれたことは記憶に新しいと思います。