ロシア精神の源

 ロシアのウクライナ侵攻が、コロナ感染症を忘れさせるような勢いで進んでいます。ここに際し、我々日本人は無力に見守りつつも、世界情勢への深い理解の機会とすることに努めたいと思います。関わる報道や情報、状況解釈等、は様々になされていますが、平均的に NATO 欧州 米国 ソ連 冷戦 ワルシャワ条約機構 がそのキーワードになっています。今回は、これらの診方を横目にしながら、もう少しその問題の深奥部に入ってみます。

 あらためてロシアと日本との直接的関わりを想い返してみれば、●日露戦争 ●ノモンハン事件 ●満州侵攻 ●北方領土問題 が最も大きいものであり、その意味は現在進行形であります。遠いようでありながらも、国家の命運を掛けて交戦した民族であり、日露戦争勝利が現代日本の礎になった事実は忘れてなりません。以降も、北方領土返還問題含め、重厚に慎重に巧妙に付き合うことが求められる民族です。

今回のウクライナ侵攻の意味を、以下の3点から深掘りします。

 民族出自と、その精神由来

 9世紀にノルマンの世界拡大の一派が、現ウクライナを流れるドニエプル川流域に定住したことから始まる民族であり、当時は『ルーシ』なる表現で呼ばれていました。意訳すれば、”船を漕ぐヒト”であり、バイキングの血であることは明白です。地理的中心地は、正に「キエフ」となり、そのまま”キエフ公国”となりました。そして、その土着の彼らに、大いなる精神性を与えたのが、ドニエプルの川下にあるビザンチン帝国(:東ローマ帝国)と”キリスト教”です。この地域は、ご存知のとおり古代ギリシャとキリスト教がない交ぜになった世界であり、ルーシはこの精神に徹頭徹尾、傾斜して行ったのです。しかも彼らの信ずるキリスト教は、ローマカソリックでも、プロテスタントでもない、「ギリシャ正教」なのです。そのこだわり度合いは、現ロシア主要都市名を視れば一目瞭然かと思います。更に付け加えると、大きいことは良いことだ!という志向が強く、国土拡大の姿はその象徴になっています。例として、頻繁に使われる”ボリショイ”は、そのまま”大きい”という意味です。

 ロシアは欧州か否か?

 この出自を持つ、ロシア最大の劣等感は、◇欧州ルネサンスと産業革命に縁していない……ことに尽きます。劣等感は、羨望に変わり、羨望エネルギーが17世紀のピョートル大帝が演出する”文明開化:欧州化”策に直結して来ます。この頃から、「ロシアは欧州か否か」という議論も出されるようになりました。その憧れの欧州ヨーロッパとの交流における要衝こそが、ウクライナであり、キエフの地なのであります。地政を視ていただければ、そこは平坦な地域でありユーラシア大陸の移動を考えれば、必ず設定されるルート上にあります。事実、ナポレオンのロシア遠征/現代のシベリヤ鉄道網でも重要な位置を占めています。ゆえに、ウクライナ/キエフは永くロシアの中核であり続けて来たことからすれば、そこへの執着は当然とも言えるのです。

 共産主義という、善意あふれる思想の実験場

 上記の流れで、大国を体を成しつつも、世界潮流である”近代国家:帝国主義時代”を迎え、やむを得ず選択したのが、『共産主義』でありました。その実は、”レーニンの挙句”と言えるかもしれませんが、本当にそれしかやりようが無かったのです。いわゆる、民主主義政体を取る文化土壌が育まれていませんでした。如実に現れる思想が、同様に、大きいものへの憧れ/大きいものに倣う/ツァーリに従う……なのです。歴代のツァーリこそは、スターリン~プーチン大統領そのヒトです。この100年は、奇しくも「共産主義自体が人間世界の理想を創るか?」とのテーマへの首実験となりましたが、結果として膨大なる人命を失いながらも、大失敗に終わったことは今更であります。共産思想の発揚に使われる近代スポーツも、ギリシャ精神とGTOが交雑した価値が与えられ、ドーピング問題に繋がっています。

これらは自身の私見ですが、皆さんはロシアをどのように視ますか?

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