藤井聡太(竜王・九段)の感性実態とは…

 世代というように、30年周期(”世”の意味)での主役交代劇は、様々な技芸文化で現われています。それは、スポーツしかり、今回テーマの将棋しかりです。飛ぶ鳥を落とす藤井聡太竜王は、羽生善治永世竜王を継ぐ、次代の主役棋士に昇り詰める勢いと実力を感じさせています。また、報道での10代離れした言葉は、思考の重さを如実に写している様であります。その若き新鋭に注目しようとする主旨は、将棋文化に隠された特性価値を明らかにしつつ、それを高いレベルで現すための基礎感性を解剖することです。

●将棋文化の特性と価値

 将棋は、『象棋』(:インドのチャトランガ)にその由来が求められ、古代オリエント世界の戦争における、戦略・戦術の盤上疑似体験をする遊び、と言えるでしょう。象に表されるとおり、実際の戦場では動物の象がその中心であった足跡を確認することが出来ます。象を用いた戦術は、アレキサンダー大王によりオリエント世界からユーラシア大陸全般に撹拌され、古代ローマ戦史においても重要な部分を占めて行きます。その流れは中華(唐)を経由して、日本にも伝播したことは同様であります。しかし、その伝播プロセスの中で、象が将に変わり、持ち駒/成り というルールが付加され、独自の形態になったことはご存知のままです。では、この一見余技と想われる将棋が、何故、藤井棋士をきっかけにしてここまで取り上げられる対象になっているのか…その答えは、「未来予想」に直結するヒト感性を磨く、唯一最高の領域であることであります。ゆえに、その若き体現者をもてはやすことは、将棋の持つ現代的価値をPRしていることに他なりません。どの時代の為政者も、未来予想による人心掌握は必須の術であったことを考えれば、当然とは言いながらも、現代ほど未来予想図が描けない世相は過去にないのです。世界最高度に引き上がった民度・先進国をリードする少子高齢化と人口減の行き先は、かたずを飲んで注視されています。さて、2050年へ向けて、日本は如何に進んで行けるのでしょうか?

●藤井竜王の感性

 生い立ち、経歴を拝見すれば、その天才性は疑いようもありませんし、IQの高さも越えていると想われます。しかし天賦の才で終わらせることではなく、その才能ながらも生来得意としている領域にスポットしてみたいと思います。公開されている得意分野は、➊数学 ❷地理 ❸体育 となっています。これを診たとき、事実、『ビビッ』と来ました。その心を申せば、身体を媒介しつつ、空間を把握し、場を捉え、抽象と投機に進む人間像をそのまま現わしているのです。学術世界が様々に分化している中でも、認知性の王道3本柱を得意としているのが、藤井棋士の背景属性でありました。直接に表現するならば、予想 先読み 投機 洞察 という優れた感性を磨こうとするとき、◎記号・言語・数といった抽象世界 ◎地政というリアルオリエンテーション ◎全てを支える豊かな知覚大地としての身体動員 が重要である事実を示していることなのです。こう視たとき、人間教育の次代のヒントが見出されるのではないでしょうか。

たかが将棋、されど将棋。一つの真理が潜んでいます!

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