ヒューマニエンス「”腸内細菌”ヒトを飛躍させる生命体」を視て
現代医科学ルネサンスの「場」である腸、”新本道”としての腸、であります。その意味の大きさを考えれば、企画が2回に分かれることも当然です。前回は、腸内細菌の持つ特性が解説されましたが、今回はそれを人間生活における外側から診た相を論点にしています。数々の論点の中でも、自身が注意を傾けた内容について書こうと思います。
★人間の本質は、脳でなく腸である。この言葉こそ、西洋二元論からの脱却と東洋一元論の再生を導く”ルネサンス”としての謂れなのです。
➊ 細菌の利用
遺伝子同様、細菌の乗り物としての身体を視れば、あたかも支配されている我々生物です。それに対して、その細菌を味方につけ利用しようとする営為が紹介されていました。一つは、スポーツ能力開発、二つは、難病治療であります。ここでは主に、スポーツ能力開発に関わって見てみましょう。同NHK番組「超人たちの人体」でも長距離走競技者の”腸トレーニング”が挙げられていましたが、論調は揃えられています。特に、腸内フローラ内の”ベイロネラ・アティピカ”なる菌の存在が、腸内乳酸のプロピオン酸への変換を媒介し、乳酸の再エネルギー化を促進しているデータが示されました。これは、ケニアのキプチョゲ選手の糖代謝能力と並べて、ヒトの持久性体力を支える腸・細菌の働きを一部明らかにしています。これを診れば、腸内フローラのバランス化と培養保存といった対策・利用が為されてゆくことは、自然の成り行きだと思いますし、”腸トレーニング”概念と方法が確立するのも真近です。当方が書いて来ている、「快食快便の力」もここに存することになります。しかし、脳・筋骨格筋系(体壁系)に対する内臓系の機能調和と捉える時、視点は細菌だけに負うことでもなく、より立体的に「内臓力」として扱う必要性に引き上がるでしょう。その立体視を支える側面は、食性/構造/機能/施術/運動の5つに集約されると考えています。
❷ 脳を育てる
この視点は、包括感性を想い起させる重要なるところだと思います。上記した、西洋二元論からの脱却によるルネサンスを迎えるに、中核を成すことでしょう。番組内では、心療内科の立場から、ビフィズス菌とセロトニン分泌の連関による、うつ/自閉症等への治療可能性が示されていました。いわゆる、現代における過敏性腸症候群(:IBS)含めた、身心相関認識の基盤を提供する”脳腸相関”そのものです。そこには、心理の更に奥にある”情動源泉”の場があり、消化吸収器から舌にまで連なる、外界触知という原始性を残す機能の残存そのものと言えます。対応するのは、まさに間脳であり、無意識・フロイトの再来を予感させるものです。
❸ ノアの方舟プロジェクト
ノアの方舟プロジェクトは、2008年にベントスコウマン、ビルゲイツによって創設された、世界種子貯蔵庫です。主旨は、天災・植物の疫病・核戦争等により生じうる絶滅危惧種の遺伝子を保存するというもので、ノルウェー領スヴァールバル諸島スピッツベルゲン島に建設されています。今回ここに、ヒトの腸内細菌を冷凍保存しようという動きがある、との紹介でした。背景は、都市化・過度利便化といった人間生活様相が、腸内細菌の総数/多様性(種類)を半減させている現実に対してのものであります。少なくとも、細菌力との共存相を実態と診るとき、その勢力の減少化はそのまま人間の能力を低減させうることが考えられるからです。古代人の便と現代人の便の遺伝子レベルでの比較も提示されましたが、その細菌勢力の差異は一目瞭然なのです。総じて言えることは、IT技術を活用した合理社会に対して、存在の均衡を確保するための”野生回帰”の取り組みに尽きるでしょう。
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考えるのは、脳
感じるのは、腸
☞ ゲシュタルトクライスも腸から始まる!!