神田古書店街

 言わずと知れた、日本の、いや、世界の古書名所であります。世界的に診ても、これほどのメッカは存在しないようで、非常に貴重な日本の文化母体であると感じています。由来を簡単に書きますと、明治時代に勃興する大学設立の動きと、それにあいまった教材流通の場となったことが大きなことであり、特に岩波茂雄氏(現 岩波書店)の成功が盤石さを支えたようです。今でも、中心的存在の”神田古書センタービル”の隣に岩波書店が鎮座しており、その面影が十分に感じられます。個人的感慨を言えば、靖国神社の鳥居から神保町交差点までの流れが、近代日本の精神性と知性を担った(現在も渦中!)重要な地政拠点との想いに強く駆られます。

 今回に書きたいことは神田の価値啓蒙と同時に、スマホ時代の”脳トレ環境”としての提案です。時代は、益々に IT AI デジタル一途 自動化 ペーパーレス 活字離れ 一発検索 の方向へ進む訳ですが、一見の合理性や利便性を得ると同時に、裏側で失われるヒトの可能性も大きなものになることは間違いありません。構造化と因子抽出には反映しない、またはこぼれる感性こそ、人間性を説明する重要素になるのです。その実態は、「アナログ性」そのものであります。書籍にまつわって言えば、即に 言語論になりますが、抽象 記号 意味 認識 理解 運用 自在 創発 速度 連関 等、アナログ知性基盤を語るには譲れない世界そのままです。『ヒトの能力開発は、言語から』と言い切れてしまう中、安易なる活字離れを日々に散見するにつけ、”逆行”を感じずにはおれません。また、文系のお話でしょ、と一括されそうでもありますが、実はそうではない知見が最新と言えます。言語の運用力は、記号という共通性を持ちながら、そのまま数字認識と相互交通して一体化しますし、言語の発生における身体起源や、声帯発声での律動性を加味するとき、それは動作/運動/体育/スポーツで育まれる”身体知”と通底することになります。では、その事実を見ながら日本教育を考えると、生徒ー学生期のお勉強、偏差値受験術 大学での専門性傾斜 が現状の平均であります。しかも近年、早期からのIT脳化を余儀なくされることにより、人間感性からのアナログ性排除は加速度的に進んでいると想われます。

 そういった世相の中、ヒトの本態たる アナログ性の維持 言語運用力の確保 創発性発芽 の土壌を創る場として、神田古書店街は最高の”脳トレ環境”であります。そういう自身も、10年に渡り隅々まで回り尽した結果、今まで以上の豊かな感性や深く鋭い洞察力を得ています。是非とも、神田の古書の海に泳ぎ出でてみてください。トレーナビリティーはふんだんに残されていること、請け合いです。

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