内臓力3
尽きないテーマですが、続きます。
「この領域は、消化器内科の範疇だから、スポーツとは関係ないよ。」としてしまうのは、いわゆる”構成的思考”の悪弊なのかもしれません。この事への問題提起は多く為されていますが、福岡伸一著『世界は分けてもわからない』講談社、の題名に如実に現わされているように、CAの立場も、ここにガッテン!している訳です。
前回、臓器を診る視点群として、2 3 5 をご紹介しました。中でも、2極性の捉え方が最も重要であり、これからのキーワードと化すことになります。この極性は、一つが内臓系であり、もう一つが体壁系でした。あまり耳慣れないですが、発生生物学における学術用語になっていますので、この機に押さえて欲しいと思います。内臓系は、生物の”食と性”を象徴し、別名:植物性器官、とも言われています。用語のままに、植物はこの食と性のみに生きる存在ではありますが、光合成という機能により、地球生態系を創造した張本人です。構造的には、根と葉が対応表象しています。総じて、沈黙して粛々と、ですから、無意識/自律の領域であり、生かす力の本源になっています。動画で少しお話していますが、人間に於いてはここがフロイト精神分析の本拠でもあり、”脳と腸”の間の一極を成すことになります。それに太極する、体壁系は、”感覚と運動”を司り、別名:動物性器官、と言われています。その象徴は”脳・神経・筋”であり、まさに動く物の実態となりましょう。植物機能である、食と性を果たす為に、目的とする場へ自ら移動する生き様へ”進化”または”分化”して来た果ての姿です。構造的には、脊椎 脊髄 脳 四肢 が対応表象しています。内臓系になぞらえて言えば、意識/体性の領域であり、生きる力の場となっています。その人間的な象徴現象が、”言語の使用” となり、他の動物群との最大の違いを創っています。また、生物本能であった食と性が、人間に於いて”趣向”となったことも、ヒト科を縁取る重要素でありましょう。
この2極は、便宜上の分極ですが、進化(分化)の過程では連続的でありました。その過程は、魚類ー両生類ー爬虫類ー哺乳類 の比較により、系統性を確認することが出来ます。しかし、その系統性は「類」間で断絶されたものではなく、各々の個体発生(受精~誕生まで)のなかで再現されています。言葉を借りれば、上陸劇のおさらい であり、これこそ、動物”人間”を本心で実感するところだと思います。三木成夫さんの世界は、分化の連続性を実験的に哲学的に表現された”知の財”として感じられます。『胎児の世界』中央公論 は、是非にお薦めしたい文献の一つであり、この知の財は、ダーウィンを始祖とし、ヘッケル ゲーテ クラーゲス 富永半次郎 三木成夫 と来て、現在は西原克成さんに発展的に繋がって来ています。西原さんは、この診方に重力エネルギーの意味を加え、呼吸から免疫へと、ヒトの日常性に展開するという業績を果たされています。CAは、これらの先達に多いに学び、戦後半世紀でしつらえられた思考枠を壊し、より効果的で面白い認識と臨床を考えています。
内臓系の中心は、以前も申しました通り、呼吸器系 と 消化器系 に代表されます。直接に言えば、肺 と 胃腸 であります。各々の性状と連関をより良く、安定かつ強靭にする関与法は如何なるモノか? 基礎体力としての内臓力を定義しようとする意図はここにあります。