animal ブーム

 世は、アニマルブームと言っても良いかもしれません。ペット、動物病院、グッズ、食品、SNS等、一大産業の勢いが感じられます。また、人間様の運動処方に於いても、動物回帰のようなコンテンツがブームを博しているようです。一見、新規の事と思いきや、「動物にヒトを投影する、ヒトに動物を診る」 という双方の態度は古代文明発祥の原点ですので、繰り返しの行為と言えます。ヒト科の進化的成立、原始生活の実態を想定すれば、動物群と同じ環境で、双方に利用し合いながら生きて来ている訳ですから、元来の関係性は深いどころではありません。動物園という意味は、そういった歴史の現代的姿なのだろうと感じます。この側面だけに注目しても、ノイローゼと化してしまいそうですが、避けて通ることはしません。皆さんと果敢にチャレンジしたいと思います。前回は、昆虫記のファーブル をご紹介しましたので、今回はその双璧となる、動物記のシートン そのヒトです。

 アーネスト トンプソン シートン 生誕1860~死去1946 英国人 です。詳細はwikiにお任せしますが、12人兄弟の末っ子という境涯は、時代性を感じさせます。生き様の凄まじさはさておき、彼の業績で特筆することの第一は、『動物記』(全55編)の執筆でありましょう。まさに世界的であり、知らないヒトは居ないくらいの浸透度です。今ここでご紹介する意図も、動物を深く学ぶ効果的手段 として知って欲しいことであります。間違っていただきたくないことは、決して”子供の読み物”と決め付けないでいただきたいのです。大人が読んでも、最高の世界観になっています。自身の著作に、動物記 という表現はなかったのですが、日本人の中村徳二郎(出版/白揚社)が、ファーブル昆虫記 に当てて創った言葉のようです。『私の知る野生動物』が、実際の著作名です。シートンの著作を日本へ紹介する上で最も力を尽くしたのは、内山賢次氏だと思います。評論社から出た彼の訳書が、国内第一歩と言えるでしょう。

 動物を深く学ぶ効果的手段として言うのは、他でもありません。その描写や、洞察・研究の態度が素晴らしいゆえなのです。もっと抽象的に言えば、”全人格投入””全感性傾注”と言い換えたいところです。著作までのプロセスで、兄の牧場で農夫として働き、動物たちと日々に触れあった経験が最も大きいことは間違いないと思います。いわゆる科学性以前と言われるかもしれませんが、このようにしないと、診えるものも見えない、のでしょう。それを物語ることとして、彼の 動物イラスト/挿絵 も同時に評価され、美術界でも仕事をしています。動物記の中に載せられている挿絵群は、全て彼の手によるものですので、是非とも手に取って観てください。既にお気付きの方もいるでしょうが、シートンのやり方とファーブルのそれは、対象は違えど、同様な方法なのです。その成果物が、世界的に評価される性質を持つことの意味は皆さんにもお考えいただきたいと思います。ペットを飼っている方がいれば、それこそは絶好の観察研究の場になっている筈ですし、今まで以上に、その眼を注がれると、新たな発見があるのではないでしょうか。

 分子生物学のみに囲われることのない、動物生態に接近する身近な方法としてお薦めします!

 以下は蛇足ですが、シートンから繋がる重要な社会連関を列記します。

白土三平氏の漫画『シートン動物記』は、動物を描く訓練としてチャレンジしたという事実。⇒ カムイ サスケ 等の作者

コンラート ローレンツ 1973年 ノーベル生理・医学賞 への多大なる影響。⇒ 近代動物学の始祖『ソロモンの指環』

ボーイスカウトの立役者 ⇒ 米国のボーイスカウト創設(エコロジー/自然主義の表象)⇒ 少年斥候隊の原点は、”会津白虎隊”

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