自律神経(autonomic nervous system)の再考
いきなりの神経系論になります。
近代生理学成立と共に生まれた概念と用語ですが、日本語としては正に名訳と感じています。今となっては、ただの生理学用語とは言え、訳出した明治の時代に想いを馳せるこの頃です。
何故にこのテーマかと申せば、現今に生きる時代要請である、合理化・デジタル化・人工化・操作性・効果性・要素化・迅速化・成果(結果)主義・言語化といった属性への過度な傾斜は、そのまま脳ひとり歩きの風潮を意味し、ストレス社会と云われる由縁となっていることを今一度確認したい意図であります。この文明は、ヒト科の最大特長である脳機能を媒介した『意識作用/学習性/抽象化』の先端?現象ではあるものの、脳以前(特に大脳皮質)の機能性との調和とバランスは、より重要な生物基盤である事実こそ、取り戻したいと思います。自律神経失調症なる例は、その最たる現代シンドロームなのであります。中核の自律神経系は、交感と副交感のペダルを踏みながらホメオスタシス(:恒常性維持機構)を、いや「生かす」作用を無自覚に果たし続けています。双方の関係性を比喩するならば、広大なる無自覚・無意識の池に浮き上がった、島としての意識性と自覚作用と言えるでしょう。上記したように、「生きる」意識に「生かす」無意識が相応しい表現です。
この自律神経系を司るターミナルは、深部脳である間脳(視床・視床下部を含んだ総称)であります。以下に、具体機能群を並べてみます。
➊ 肉体の制御管理
〇血液中の酸素量、呼吸リズム管理・調節
〇血液/心拍/血圧/血液量の管理・調節
〇血液中の栄養量の管理
〇体温の管理・調節
〇体内水分量の管理・調節
〇ホルモンの管理・調節
〇自律神経系の管理・調節
〇食欲/排泄欲/性欲の管理
〇反射/運動機能の管理
〇細胞代謝と遺伝子の管理
〇人体を流れる電流・エネルギー系の管理
〇人体の上下/左右/前後のバランス調節
❷ 意識の管理
●記憶/判断/言語中枢としての働き
●脳神経伝達の管理
●五感情報の分析/伝達
●大脳新皮質とともに意識の管理
●脳波の出力と管理
❸ 無意識の管理
◎心や感情、感覚の原点
◎精神バランス機能
◎無意識の行動や言語の原点
◎直感/感性・感受性等、潜在能力機能
◎地球との共鳴振動の管理
煩雑、膨大になりましたが、これでも一部に過ぎません。唯一言えますことは、深部脳が水面下で支えている存在という実態であり、その多くが無自覚・無意識での機能であることです。テーマに挙げた自律神経系も、全てこの範疇になっており、発生史を重ねますと、体壁系に対する内臓系として視ることが出来ます。
話をまとめます。
一般に言われる生命リズムを生体上で現し続ける張本人は、間脳制御下の自律神経系であり、交感と副交感/緊張と弛緩の働きを以て、動いています。現代の全デジタル化、過度効率化の社会システムこそは、人間を緊張と拘束に導くことに繋がり、そのバランスを崩す原因ともなっています。このことは、失調症の頻発/駆け込み寺としての心療内科/マインドフルネスというブーム/非行/肥満・過食 等を説明するでしょう。また、今のコロナ禍で取り沙汰される”免疫性”や、IBS(:過敏性腸症候群)も同様に診ることが出来ます。ここから言えることは、緊張とともに効率性のみを追い掛ける大脳ひとりあるき、の世相にあって、如何に自身を創る無自覚領域(間脳制御)との調和を維持するか、またはその潜在可能性を引き出すか、だと感じています。フロイトも云うように、無自覚エネルギーの巨大さを識れば知るほど、その想いは強くなっています。