ヒューマニエンス「筋肉”感応する奇跡のシステム”」を視て

 いつか出る筈のテーマが今回の「筋肉」でありました。運動趣向のある人間としては、外せないところかもしれません。そういう自身も、列中のひとりです。この骨格筋研究は、第一回東京オリンピックを皮切りに国内でも盛んに行われてきました。結果、良く知られる、ハクスレーのスライディングセオリー/ミオシン・アクチン/hypertrophy/筋タイプ/乳酸/酵素活性/遺伝とトレーニング適応/筋力・筋量/柔軟性 等は、業界共通認識となっています。そんな中、どんな面白い論調を展開してくれるのかという期待感とともに視聴した後の感想を、キーワードに沿ってまとめています。

マイオカイン(筋放出ホルモン:BDNF)とうつ病

 このことは、現今のコロナ禍での国民総不活動状態という状況下では、切実なところであります。生きることは、動くこと、の言葉の通り、骨格筋の動員は筋特有のホルモンを分泌させ、そのホルモンが脳活動を賦活する仕組みが紹介されました。そこに於いては、脳からの遠心インパルスもありながら、末端骨格筋からの求心作用も存在するという、相補的な活動性向上の確認といった内容で理解しました。私見としては、掲げたうつ病や自閉症といった一見の精神症状であっても、元凶は身体性にあるという事実、また、番組内で使われたAIの利便性が創る”筋肉を裏切る怠惰な人間生活”が引き起こす近未来の逆適応への不安、この2点に集約されています。最近では、米国:ジョンレイティーの論調と整合することであります。

骨格筋600種の連動システム

 近年取り沙汰され始めている、ヒトの『巧緻性』を筋制御で云おうとする場合の表現でまとめられていました。いわゆる、筋内センサーとしての筋紡錘と脊髄神経間で無自覚に為される筋間コミュニケーション(コーディネーション)の秀逸さのことです。この機能性は、ロボット工学世界で長くその再現が目指されていますが、未だ果たされておらず、ヒト(動物含む)動作性の神秘は拓かれていないのであります。もし仮に、人知による再現が為された時にこそ初めて、「ヒトの動きが分かった」と出来るのでしょう。しかし、生物にとっての母なる環境性を捉えずに、あくまでも骨格筋動態のみで解明しようとすることは、正に至難の業なのかもしれません

筋肉間通信によるスキル・コツの伝達

 上記の❷と関連した内容で、ヒトの運動学習行為を、対象動作で特徴的に動員される筋インパルス発生に求める研究発表でした。番組内では、ゲストの柔道レジェンド野村さんが、バーチャルスコープを装着しつつ、先立つ筋刺激を頼りに動作を再現学習するシーンが現されていました。そしてその目指すところは、高いレベルの競技者の筋動員をミラー学習させることによる『動きのコツの伝承』に据えられているようでした。研究の構造は、伝統的な筋電/近年のAIバーチャル の合わせ技という形で、先鋭とも想われますが、運動学習の実態・コツの発生様態の解明、というブラックボックスに対しては、相変わらず外から眺めている態度であることには変わりありません。

筋の進化

 進化論が最高の興味の的となっている人間としては、果たしてどの視点を持ってくるのか、手ぐすねを引くところでした。以下に、出された4つのポイントを書きます。

速筋と遅筋の選択

ヒト下腿筋の半羽状構造と脚形態

咬合力退化と側頭筋退化

長掌筋の消滅

 特に、筋構造の取捨選択(獲得と喪失/エネルギーエコ発想)の仮想実態が、説明方便として使われていました。上記の4点、教科書的で単純納得に修めるならばそれで良いのかもしれません。しかしどうしても、何故そうなったのか、動物界の実態はどうなのか、進化相の具体描写は、等の疑問は拭い去られることはありません。ここに於いても、部分観では決してその深奥を捉えることは出来ないという、ヒト感性の仕組みが露わにされただけの感慨です。

柔道レジェンド野村忠宏さんの経験論

 正直、ここが最も大事な部分であったと思います。野村さん自身、いくつか話を出されましたが、ここで挙げたい内容は唯一以下のことであります。

「柔道は、畳の上で鍛える」

 この言葉通りの実践成果と、握力計測定:40㎏/ベンチプレス測定:60㎏というデータから、何を診ようとするのか、正にヒト/動き/学習/認知/トレーニング 等を貫く仕組みが、如実に現れたものと言えるのではないでしょうか。少なくとも、この経験に対極する世界が”ボディビルディング”そのものと診えています。このテーマは、現今の業界を騒がせるものの正体ゆえ、皆さんと共に更に大いに思考と実験を重ねたいと考えています

メジャーリーグ大谷選手と、スケーリング問題

 ここに関して言えば、事後的に多くを語れば、不毛さばかりを暴露することになりますので、一言私見のみ書かせていただきます。

「生理学で云うスケーリングを裏切る現象ならば、ヒトはスケーリングでは評価し得ない、あるいはそれ以上の側面を持っているのだ。」

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