ヒューマニエンス「”睡眠”ヒトは眠りで進化した?」を視て

 昨今の出版業界における”睡眠論”ブームに後押しされ、この現象を見返そうとする動きが盛んであります。その動きは、いわゆる、”良い睡眠の取り方”に集約されているようで、身体への働きかけ/精神関与/時間操作/寝具論、と周辺を取り囲んでいる様相が視えています。自身も、旧来よりそこへの興味はふんだんであったゆえ、このブームには敏感に反応しています。人間業を果たす中では、正に日々のサイクル行動の象徴であります。しかし、せめてもの知的態度として、客観視点で生物の睡眠実態に迫ることは、脊椎動物の様相開闢に迫ることに近く、『what is human?』への好奇心を支える重因子の一つであると強く感じています。その意味で、今回のヒューマニエンスのテーマは内容含め、書きたい衝動に駆られた次第です。以下、焦点化したいと自身が捉えたポイントを、いくつかまとめています。

【子】2つの眠り

 長い眠りは、ヒト科ヒト属にのみ現れる特長である…この事は人間らしさを説明する、大事な外堀と言えます。長さが創ること、創られた背景こそ包括進化そのものですから牙城は高いのですが、城の裏側から診ると、長くならないとヒトにならない、と見得る訳です。そしてそれはREM睡眠(:rapid eye movement)により媒介されていると同時に、ヒトにはREM遺伝子(M1/M3)が存在するという事実は、ある意図と構造を浮かび上がらせます。ご存知のように、睡眠は、REM睡眠(:rapid eye movement)とnonREM睡眠(:non rapid eye movement)のサイクルで構成されており、急速眼球運動の有無と脳波EEGが永くその判断基準でありました。しかし、近年のMRI含めた技術発達はその深奥に接近することを可能にして来ています。ここで大事なポイントは、旧睡眠としてのnonREMこそ、全機能(脳と身体※内臓含む)が停止状態であり、寝返り行動はそれを指し示す兆候であるということ。また、後発である新睡眠としてのREMは、脳覚醒・身体機能停止の状態であり、双方の乖離分断と診えることです。これを以て、REMとnonREMの対称性が更に立体化されたと思います。そして、長い眠りを演出するREM睡眠こそ、ヒト知性醸成の場である生物実態を露わに魅せてくれたのです。例として、いわゆる、金縛り現象は、REMの成せる業となってきます。

【丑】睡眠と進化

 生物の睡眠質を追うと、魚類/両性類/哺乳類、にREM・nonREM様の双極性が確認されているようです。その意味で言えば、脊椎動物を説明する因子は、脊椎のみにあらず、とも出来ることになるかもしれません。これは、脳の進化と歩調を合わせることにもなりますが、海洋生物であった時の原始脳内に既に存在した機能であった事は非常に興味深いです。この双方の役割を挙げますと、REMは覚醒時に脳へ入力された情報の消去・温存保持・補強、nonREMはREMステージで処理された状況の定着・促通・シナプス結合化と記述することも出来、この自己選択による相互作用は、ダーウィンの云う進化論の脳内実現に診えると表現した上田さん(番組ゲスト出現の東大教授)の言葉には、引き付けられました。含めて、あらゆる現象を創る重層性(歴史観)こそ必要な知的態度でありますし、「日々あらたに生まれる」と言った抽象も、正に肯首なのであります。

【寅】夢判断

 眠りと言えば、夢は外せない興味対象です。夢研究の元祖こそは、上記しました「夢判断」を著しているフロイトそのヒトであります。ここでフロイト談は重過ぎるゆえ、紹介に止めますが、脳科学を中心とした睡眠研究と同時に、押さえなければならない領域であることはお伝えしておきます。そこはその個人に宿る潜在意識・精神性の発露であり、記憶と感情処理現象が為されていることは間違いのないところでありましょうし、”寝ればスッキリする”ということのリアルとも言えます。事実、認知介入による解釈の転換が有意な療法として行われていることも、その実態を物語ります。ここで、REM論と重ねます。眼球運動と夢の関係は、卵が先かヒヨコが先か、であり、眼球運動が生じるから夢が現れるのか、夢が眼球運動を引き出すのか、未だ未解明ではありますが、夢こそはREMの意味を表すことは間違いないのです

 ★ここからは私見になりますが、夢は視覚性を基本としていて、視覚性はそのままイメージ(イデア世界)に繋がります。このことは、ヒトの抽象化能力を創り、脳機能発揮の最高次元を説明することになるのです。事実、天才脳の共通性に視覚化能力がありますが、そことの融合解釈は、貴重な知見と言わせていただきます。更に蛇足を申せば、対極に「音」が来るのです!

【兎】総論:私見として

 この番組は、脳科学を中心として睡眠を考えましたが、ここに身体面を付加してみたいと思います。これは長期で診れば冬眠が充たると想われますが、日々の睡眠も部分的にはこの機能を果たしていると考えています。入眠時は、覚醒時に比して、低体温・低酸素・低代謝状態になり、一見仮死状態と捉えることも出来ます。この生体への意味は、パラサイト駆除というメンテナンス/活性酸素発生の低減化、という2点も見逃せず、REM/nonREMという解釈と合わせて、睡眠理解を大幅に深めることになると思います。総じて診たいことは、睡眠含めた休息(:間!!)の重要性であり、全ては夜に創られる、という表現への傾斜なのです。

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