TBS傑作選「JIN 仁」を再び

 今、我々が戦う「新型コロナウィルス感染症」と、江戸時代に流行した「コロリ(正式名称:コレラ)」とその克服史を当てて、昨年春に再放送されたことは記憶に新しいところです。”神は乗り越えられる試練しか与えない” この言葉は、我々にも何がしかのエネルギーを与えると信じたいと思います。今回は、大ヒットした理由もさることながら、表面上からは見えない作品の深読みを致します。

 ご存知の通り、TBS開局60周年記念に作られ、2009年第一シリーズ11話/2011年第二シリーズ11話(全22話)で完結させているドラマです。原作は、力のある漫画家”村上もとか”の書いた「JIN 仁」の全20巻で、実写においては大きく変更されているところもあります。しかし、ドラマ自体の仕上がりは、漫画以上と言っても良いと感じています。当然に言うまでもない高い世間評価ではありましたが、その理由の多くは、原作の面白さ(タイムスリップ方式)、初期医学のリアル、役者の名演技ぶりとヒューマニズム、泣かせどころの配置、が占めていると想われます。では、ここから2側面の深読みです。

➊ 江戸から明治への大転換期(革命とも出来る)の歴史と風俗を背景とした、日本医学史

 南方仁(西洋外科学)と緒方洪庵(東洋内科学:本道)の攻防描写は、日本医学史を捉える上でも重要な視点だと考えています。このテーマは、西洋知と東洋知の関係性の始原を指し示すものであり、現在も未来にも引き続くことであります。ドラマの歴史考証も適切であり、そのままに視ても足るものでしょう。また、梅毒・脚気といった風土病の臨床も交えているあたり、抜かりない構成と思います。ちなみに、世界的にも、感染症 免疫 ワクチン ペニシリン は、医学勃興の起爆剤になっており、パスツールに返る具体的切欠を与えてくれます。

❷ 作品の視えない重層性

 この作品を支える構造は、少なくとも3段の層を持っています。以下に、示します。

1段目 「JIN 仁」 村上もとか

2段目 「大江戸神仙伝」 石川英輔

3段目 「江戸学の大家」 三田村鳶魚

 漫画家村上もとかさんは、その発想や背景を石川英輔さんの作品から取っていることはほぼ間違いないと想われます。石川英輔さんの作品群を見ていただければ、この指摘は自明でありましょう。ポイントは、江戸とタイムスリップになっています。また更に、日本の「江戸学」と言えば、三田村鳶魚さんを措いて他に有り得ませんので、石川英輔さんの基礎研究の場は、ここに存在している筈です。総じて、知の3段構造はこのように果たされていること、是非とも知っていただきたいと思いますし、「作家の背景と基礎研究」への理解を促したいのです。

 たかがドラマと言ってしまえばそれまでかもしれませんが、名作としての”浮世”も、診方次第ではどれほどの味わいと学びが潜んでいるか、というお話です。

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