ヒューマニエンス「”死”生命最大の発明」を視て

 番組テーマも徐々に本丸に迫って来ています。今回は、あたかも最終回のような、ヒトの「死」についてです。果たしてNHKがどのようにまとめようとするのか、興味津々で視聴しつつ、湧き上がる想いを書いてみようと思います。

 まず思うことは、如何に「死の科学」が進もうとも、永遠に解明し得ない現象であろうし、定義も立ち上がらないということです。せめてやれることは、回りから”つつく”ことに終始するのみなのではないでしょうか。その理由は番組でもありましたが、「体験・実験出来ない」ゆえであります。生還の事例は無きにしも非ずですが、真偽性を問うには足らないレベルです。こればかりは致し方ないと思いきや、それを自ら掴もうと、自殺を試みるのも人間であります。事実、力のある作家(多くが博識眼からの人間学を標榜し著作をするタイプで、精神状態は虚無)が、「What is human?」という遠大なるテーマへの結論を求めてその行為に出ることもあります。極論ではありますが、生きる意味を識るには、死んでみるしかないというのは唯一手段であることは理解できます。しかし一般に言えば、死の定義を創り得ないということは、生の定義も創り得ないことであり、疑問は深まるばかりなのです。こういった人間界での問答はもちろんに古代からであり、結論は死への恐怖を裏腹にした「不老不死:長寿」への憧れのみがあるだけです。世界の文明群遺跡や残された文献範囲ですら、そのことを如実に物語っています。

 以下、取り出したいポイントごとに書きます。

子)脳死ということ

 脳死現象は、確かに人間的機能(知覚/運動/認識/言語)は失われますが、内臓生現象の独自性を証明することにもなります。ここにこそ、生存の二極性を実感することが出来、意識と無意識を包摂した重層性が立体的に認識されるのです。では、また逆に、脳生現象↔内臓死現象は起こりうるのでしょうか?残る疑問です。

丑)生命最大の発明 by スティーブ・ジョブズ

 生前、癌告知を受けた後のスティーブ・ジョブズが表現した言葉です。さすがにスマートな感性を彷彿とさせますが、生物学的に言えば、「有性生殖の真骨頂」としての”親の死”は、子孫繫栄へのベストソリューションである訳です。そのように進化した前段時代の「無性生殖」こそ、常時に全滅危機を抱えながらの不安定存在の象徴であり、交雑と多様性の価値と意味を見せてくれる場になっています。

寅)テロメアと寿命上限

 遺伝子の末端にあり、細胞分裂の調整をしているのが「テロメア」であります。これは事実のみを書きますが、分裂回数の上限(テロメアの短縮限界)は50回になっており、分裂の1サイクルが2.5年ですから、掛け算すると「125」です。この125が、遺伝子上の最大寿命になっています。実際の人間世界を診ても、頷ける数字として捉えてもらえると思います。しかし唯一、テロメアが短縮しない場があります。その場はまさに「生殖細胞群」なのです。生殖による遺伝子継承こそ最高の生存意義とする、ドーキンス論を想起させると同時に、「食と性」のエネルギー背景と本能力に引き戻されることになります。

兎)人工冬眠

 冬眠と言えば、変温動物か「熊」の専売特許だった筈が、哺乳類のマウスで疑似現象が実験的に再現されたとのお話です。その機序は、脳内(間脳)の冬眠スイッチの発見が主因であり、スイッチを押すことにより低体温誘導からの睡眠が現れたとのことでした。ここから想うことは、生物の体温と生物時間の相関です。過去に「ゾウの時間ネズミの時間」本川達夫先生著という書籍がありましたが、比較的近い認識領域にあるテーマです。キーワードは、環境/呼吸/体温/生殖/寿命等が絡んで来ます。この事の深奥に迫るためには、海洋生物に眼を遣ることが最有効です。私も、更に具体介入するつもりです。

辰)不老長寿と銀河鉄道999

 人間の不死への憧れは永く、秦の始皇帝の執着などはとても尽くせないレベルのものであった事は、遺跡が証明しています。そして、それは養生術として民間にまで伝搬され今に至っています。気 丹 錬金術 などは、最たる文化産物である訳です。それが現代に至っては、医科学見地からの”治療/処置/投薬/延命”にバトンタッチされながらも、寿命は延び続けています。「おばあちゃん仮説」を見れば、長生きも悪くないとは出来ますが、”永遠の命”の意味と価値を機械化人間に表象させたアニメ「銀河鉄道999」と合わせて考えるとき、”適切”という単語が浮かんで来ました。果たして皆さんは、どのように感じるでしょうか?

【蛇足】 長生き とは、長息 なり!

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