鶴の一声(ひとこえ)
良く知られている”諺:ことわざ”です。以下、辞書解説文を書きます。
➡ 皆が、否応なしにそれに従う、有力者・権威者の一言
この諺にコーチングの何を診るのか?それが今回のテーマです。
真正面から捉えれば、指導者として如何に効果的な声掛け、言葉の選択が出来うるか、、、と考えが進みがちになるかもしれません。勿論、それも範疇ですが、敢えてその予想を裏切りたいと思います。では、諺の出た原点を探ってみましょう。それは正に、鳥類における「鶴:脊索動物門/脊椎動物亜門/鳥綱/ツル目/ツル科」であり、ほぼ全世界地域に分布しています。首から嘴、翼が直線的に長く、色と相俟って、その美しさが表象されることが多い鳥であり、日本画の題材や、航空会社(JAL/フルトハンザ)のマーク使用にされて来ています。また、同じく諺としての、「鶴は千年、亀は万年」などは、長寿の象徴として含意されており、事実、飼育で50年以上、野生で30年以上の寿命であります。不老不死を願う人間の精神構造から、鶴を養生の対象と成して来た事実は、肯くばかりです。人間史の中での長きに渡る動物観察が、特長的な動物特性に”乗る””あやかる”という慣習に残る貴重なものです。これこそ、それを受け取る感性含め、文化と言えるものだと思います。そして更に、中核の生態要素としては、”渡り”が挙げられます。実は、この渡りこそ、鶴の一声 を説明するものになるのです。渡りの習性は、空に生存空間を求めた鳥類の中でも、飛翔性・呼吸力に優れたもののみが可能な手段です。また、渡りの距離にも依りますが、多くはV字編隊を組み、高高度を飛翔して行きます。その時、編隊を構成するメンバーを統率・制御し、無事に目的地まで渡り切らせるために、最も重要な因子は何でしょうか? それは、編隊のリーダー(V字の先端を飛ぶ)が如何に適切な指示発声を出しうるか、に掛かっているのです。状況判断はさることながら、寒冷・高速・風圧環境で、隅々まで声が届くかどうか、が唯一ポイントになります。その意味で、鶴の発声器官は特にその機能が優れているのです。「良く響く声、とその発声能力」にこそ、この諺は含意されています。
ちなみに、こういった鳥類の能力を、現代航空機世界で、しかも戦闘態勢の中で実現し続けたパイロットこそ、「坂井三郎」そのヒトです。同時に、養生・鍛練・修業要諦に生かしたのが、中華道教世界の五禽戯であります。一見の最新エビデンストレーニングの感性と、是非とも比較してみて欲しいのです。生きる力の実際はどういった性質のものなのか。