地図 の チカラ

 「来し方、行く末」と言いますように、時間という全くに不可思議な現象は、歴史という足跡を残しながらも進み続けています。止まることない積み重なりは、今を、そして未来を慮る唯一の拠り所である訳です。”歴史に学ぶ”という知的態度が、如何に有効なことか、言い尽くせないことでしょう。先端・最新・エビデンスと宣うと同時に、それを創る歴史性に想いを配る必要性は、非常に大きいと感じられます。その意味で今回は、時間と空間の変遷を、せめて立体的に捉えようとするときに威力を発揮する、「地図」のお話です。地図と言いましても、色々にありますし、現代に於いてはGoogleなどの3次元画像地図が究極のものでしょう。しかしこの意図でご紹介したいのは、”歴史地図”という領域です。歴史地図とは、時間/時代の進行とともに、その空間/地域がどのように変化をして来ているか、を表すものです。地球前提で言えば、大陸移動から始まり、現状の位置関係を形成し、そこに生命が生まれ、如何に遺伝繁殖し、霊長類まで辿り着くか、と行きたいところですが、その膨大さでは、収拾が覚束ないゆえ、あくまでも人類史に焦点を当てたいと思います。具体的には、アフリカ大陸での人類発生から、四大文明に端を発し、第二次世界大戦(1939年~1945年)までの枠組みになります。その時間的・空間的枠組みの中で起き続けている、交雑極まりない交流/攻防/統治を概観しながら、自身の興味の先を紐解き、立体的に把握してゆくには歴史地図は不可欠の道具であるのです。

 自身の事を例として申せば、現代欧州の成立実態を知るため、地中海地域にフォーカスしました。この地域は、エジプト・メソポタミア(→ペルシャ)の影響を背景に、エーゲ海文明が牽引したことが発端となっています。ヨーロッパという呼称も、当時地中海を席巻したフェニキア人の女王の名前(:エウロベ)であることから、その由来は自明でしょう。人類史でエーゲ海文明と言えば、「ギリシャ文化・文明」が中心となります。2大知的爆発の双璧を成すエネルギーが、この地で起き、以降の文明性の中心であり続けている状況を診るにつけ、地中海に釘付けされるような感慨を持つのは、共通のことだと思います。また、その神話世界は現在でも我々の日本人の生活に深々と残っているのです。古代とは言え、あらためて、”止まることない積み重なり” の中での今に生きています。そして、ギリシャとの意図的関与で生まれる「ローマ世界」には、現代欧州(EU)の原形と、民族精神性が垣間見えるのです。ローマ世界は、地中海地域を統制し、ガリア ゲルマン ノルマン を台頭させ、人類の進歩には欠かせない力を示しました。200を越える属州の地理的配置、是非とも歴史地図で読んでみてください。そしてその中で、戦争と宗教により巻き起こる民族揺籃は、人間性を露骨に現す教材であります

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