本当の ラストサムライ 5

 私の信ずるラストサムライとしての「予科練」は、近現代における”日本男児の誉れ””武士道の寵児”として、歴史に残して行かなくてはならないと考えています。時代、文明は変化すれども、日本国家を支える見えない精神支柱は、不変であり続けます。心理的自己完結(=アイデンティティー)は、存在の安定を創る絶対基盤であるという真理を踏まえれば、左右を問わず異口同音に治まるでしょう。故に、戦後75年以降、出自への回帰は大事な作業になって行きます。

 そういった大局視点からすれば、些細なことに配されることかもしれませんが、あの時代に非常に重要なる研究・臨床・実践成果が見出されていることをご紹介します。それはいわゆる、『平衡医学』(=航空医学)であります。ヒトの 空 そら への飛翔を企図し、航空機/パイロット/戦果を考えれば、中核に来る領域になります。前回にも書きましたが、パイロットが暴露される環境・状況は、低圧 低酸素 重力加速度:G 高速 狭所 空間識 等、正に、プロペラ一つの軽い機体に搭乗し、4次元空間に放り出される訳であります。放り出されてこそ湧き上がる人間的感慨を一言で表現すると、「空間の奴隷」がピッタリだと思われます。この言葉は、平衡医学研究者である、高橋正紘氏の書籍『動揺病』からお借りしたものであることをお伝えしておきます。一見の地球重力環境も、ひとたび地を離れれば、その実態に翻弄されるわけであります。当時の航空感覚は、現代の宇宙感覚に近いものでしたから、パイロットに求められる超人性は非常に高いものでした。今でこそ、必要な適応要素が整理され、トレーニング内容の構成も変わって来ていますが、当時はパイロットの身体性に負うところが大きかったのです。しかもただ飛ぶだけではなく、空戦 爆撃 偵察 索敵 などの戦術行為を正確に果たすことが求められます。そういった背景から、軍を中心に平衡医学が鋭意研究されました。研究成果の中でも、最も特筆すべきは、”福田精”先生の世界です。やや詳しく申せば、それまで平衡医学を席巻していたバラニー論(ヒト平衡機能の三半規管への限局性で、1914年ノーベル賞受賞)を覆す結果を見出しています。これは世界的業績でしたが、内容ほどの評価を受けず今に至っています。日本人としては、非常に残念なことですが、時代を考えれば仕方のないことであったと想われます。しかし、福田先生の構築した平衡論は今でも業界見識のスタンダードであり続けている状況を診るにつけ、戦時の研究迫力を感じさせられるのであります。科学の発展と戦争は裏表である、ということは、人間性を示す普遍則なのです

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